子どもの何を育てたいか

仕事のことはあんまり書きたくはないんだけれど、どういうわけか読者にはよく読まれているらしい。乗せられて今日はちょっと書く。
保育士の先生が子どもの興味をぐいっと引っ張る一斉保育の素晴らしさは見事なものだ。先生がマイバックをゴソゴソしながら「お話読むよ〜」と叫べば、一斉に1歳児が集まる。それも「ちょっと前に来すぎ〜」と先生から文句が出るほど食いつくように見ているのである。1歳児が、である。もちろん、絵本選びも読みもうまい先生なのであるが、この集中、いつも惚れ惚れしてしまう。ああ、こうやって先生の話は面白いもんだ、先生の話を聞いてみようと自然に調教していくわけか、と納得する。
例えば、保育士の夏休みでいつもより人手がちょっと足りない時、そういう先生は自由遊びを選ばない。「お話読むよ〜」とひと声かける。自分一人で一気に子どもを引きつけて、その隙に他の先生に雑事をやらせてやる。自由遊びだと必ず喧嘩があちこちで始まり、一人では見きれないからだ。この判断、確かにうまい保育だと思う。と同時に、いかにも先生ありきの一斉保育らしいと思う。

私が昨年から引き続き、メインでいるクラスは3歳児。今度の担任は一斉保育の園には珍しく遊びを中心に考えてくれる保育士である。もっと言えば、躾より遊びの充実を優先するタイプである。普通の、というか昨年度の担任なら、椅子を子どもたちがワンサカ出して遊ぼうもんなら、危ないとか出す数の制限にかかるとこだが、やりたいようにやらせている。食事の後もパジャマに着替えさすことより遊ばせる。食事の後片付けでどんなに大変でも子どもは布切れをヒラヒラさせて呑気に「せんせい、マントして〜」と来る。内心、マントじゃねえだろ、パジャマだろと思っても、担任はパジャマを着せるを選ばずに自由に遊ばせるのである。自由遊びであるから気づくとマントもあれば、ままごともパズルもブロックも出ていてクラスはオモチャでひっちゃらけている。これが昨年度の先生だったら、ひと声「絵本だけにして」で済んでいた。この違い。
確かに片付けている大人からしたら、片付けたそばからで椅子を再び出されて電車ごっこで並べられるのは徒労感ハンパない。でも、よくよく考えてみれば絵本だけという遊びの制限をかけるのは大人の都合なのである。子ども本来の姿ではない。担任が夏休みで休んだ時に他クラスの先生が手伝いに来て「すごいわね、このクラス」と半ば呆れた顔をしていた。パートも「オモチャまた出していいの?」と驚いている。
統制がとれない、ヒッチャカメッチャカのクラスに見えるかもしれない。しかし、ままごとの流し台の向きを変えて、水道を電車の運転レバーに見立てて絵本を運行表に見立てて遊ぶ発想を見せてくれたのは今のクラスの子どもだけである。「これはおままごとの水道だからおままごとで使って」などと言っていたら、絶対出てこない発想である。やりたい遊びのためなら、イメージの実現のためなら机の裏面だって椅子だってなんだって使おうとする、大人に机を出してもらう時間も惜しいまま床でどんどんパズルを始めちゃう。つまりはやりたい遊びと実現の欲求に忠実で、何としてもそれをやり遂げようと自ら考え動く力がガンガンに養われているということなのだと思う。やりたいことを今やりとげたいという欲求の強さは子どもといえど逞しさがある。躾の面ではパズルは机について椅子に座って、と言いたいところだが、そんなことお構いなしに始める姿は実に子どもらしく無条件に輝いている。見方の問題なのだろうが、もともとは躾意識の強い一斉保育の園なのでこういう自由遊びに重きを置く変わり種の先生がいても面白いんじゃないかと思って見ている。彼女に対して「〇〇先生は怒らないから」と批判めいたことを言う経験3年目の保育士がいるが、ここで道を間違えてほしくないなと思う。やりたい遊びをやり遂げようとするあのがむしゃらなパワー、そこから生まれる発想力、創造力。大人の自分たちにも欲しい力じゃないか。躾として先生の怒号一発でその萌芽を摘んでしまうことは実は容易なのである。子どもの何を育てたいか、今の担任にはそれがはっきり見えているのだろう。そう理解する。
最初は違いに驚いて担任の指導によってこうも子どもが変わるのかと思ったが、今は大変だけれど、発想力のある頭の柔軟な面白い子どもたちに尊い魅力を感じている。

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by zuzumiya | 2018-09-09 23:10 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(2)
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Commented by 保育園の元保護者 at 2018-11-13 17:45 x
はじめまして。

私は安井かずみさんに関する記事を探していて
こちらにたどり着きました。

我が家は、
上の子が保育園を卒業して数年たちました。

次は下の子を保育園に入園させるつもりでしたが、
待機児童の急増で保育園に入れそうもなく
保育園は断念するつもりです。

うちの上の子は、
遅番だった非常勤職員の保育士さんに
とても可愛がって頂きました。

しかし、
その方は非常勤だったので、
個人面談で私たち保護者と直接お話する機会もなく、
行事も参加されませんでした。

上の子が通った園は公立保育園でしたから、
「常勤と非常勤とで勤務内容を同じにできない」
という理由で非常勤職員は担任にしないのでしょう。

でも、常勤でも非常勤でも保育士だという点は同じ、
非常勤やパートの保育士の方たちをもう少し尊重してほしいと
いつも感じていました。

また、
上の子が最初に通っていた私立保育園では、
保護者の目の前で、
若い保育士が、
さらに若い新卒保育士やパート保育士に
命令口調で指示を出すので、
私は正直、よい気持ちがしませんでした

今、常勤職員・パート職員・派遣社員…と
様々な形態の方が保育園にいらっしゃいますよね。

保育園の元保護者としては、
勤務形態によらず、
ひとりの保育士としての意見が尊重される
保育園であって欲しいと思っています。

Commented by zuzumiya at 2018-11-23 09:14
コメントありがとうございます。返信が遅くなり申し訳ありません。そうですね、常勤と非常勤とはやはり一線を引かれます。私はどちらも経験しているのでわかりますが、どうしても業務量と責任の度合いが違います。非常勤でも担任であれば別ですが、早番遅番など部分的にしか関わらない先生は無資格者もいたり、書類も書きませんし、会議や行事にも出ないのではないでしょうか。でも、子供たちはちゃんとわかっていて、担任とはまた違った関わり方をして、甘えてみたり、一対一でじっくり遊んでもらったりしていますよね。絆はできていて、うちの園では卒園時、父母会がわざわざ非常勤にもお礼のお菓子を置いていってくれたりします。若い保育士の命令口調の件は園の上下関係の隠れた悪習というか、結局、彼女も先輩保育士に同じことをやられてきたのでしょうね。うちの園でも過去に非常勤がそれで辞めたりしたこともありました。逆に子どもたちの前で非常勤を立てて下さる先生もいて、気持ちよく仕事ができます。そういう先生には少しでも役に立とうと頑張ろうとするのが人情ですし、ある意味、人使いが上手いと言えます。要は人間性の問題なのでしょうね。貴重なご意見、ありがとうございます。
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