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ニチニチ草の葉陰に

猛暑の続く中、一回の水やりを忘れたために玄関脇にあったワイヤープランツが全枯れしてしまった。空いた鉢に今度は花でも植えようとホームセンターを見て回った。ここ何年かはポピュラーなニチニチ草とペチュニアを交代に植えてきた。しかし、夏といえば、やはりニチニチ草だろう。容赦ない直射日光と少々の水やり忘れでも耐え抜くしぶとさがある。育てやすさはダントツなのである。ペチュニアはしなやかで、か弱そうな外見にもかかわらず、放っておくとやたら丈を伸ばしてアフロ頭のようにだらしなくぼうぼうになる。剪定すればまた新たに茎が伸び、再び花を付けるのだが、そういう面倒さを強いてくるのが嫌だ。萎れた花を取ろうと伸びたアフロヘアの中に手を入れると、いかにも「ペチュニア」というクチュクチュした音らしい、なんだか粘っこい液が付いてくる。そんなところも嫌いである。その点、ニチニチ草は潔い。花はしぼまず、パラソルのように開いたままポイッと落ちる。その名の通り、一日咲いたらポイッなのである。ニチニチ草のその潔い捨てっぷりは過去をくよくよ振り返らず、明日は明日の風が吹くさという非常に前向きな人生訓を想起させる。掃除のしやすいところも助かる。
で、ニチニチ草の赤とピンクを購入し植えたのである。翌日、水やりの時に鉢を見ると葉っぱの上に4センチくらいの子どものカマキリがいた。そいつはワイヤープランツが植わっていた時に一度姿を見せたやつである。ワイヤーがそいつの巣で、今までこんもりとした葉の茂みに守られ、ここまで細々と一匹で育ってきたのだった。それにしても何を食べて生きてきたのか、ずいぶんと大きくなった。ワイヤーが全枯れして庭に捨てられた時には門柱の裏にでも避難していたのだろうか。雫の残ったニチニチ草の葉にしっかりつかまって揺れている。しかし、私はカマキリが好きではない。だいいち、あの顔。三角形の細い顎に大きな目。いかにも狡猾、意地悪そうな顔。怒った時のカマの振り上げ方、中国人の武闘家のような一丁前の動き、燕尾服のような裾広がりの羽の広げ方、ぷくりと膨らんだ腹。どこもかしこも嫌いだ。なのに、毎朝毎夕の水やりの時につい「今日もまだいるかなぁ」と重なる葉っぱの陰にその姿を探してしまう。見つけると「おはよう、今日も暑くなるぞ、気ィつけろな」と心で呼びかけ、姿が見えないと「死んだのか」「ついにどっかに行っちゃったか」と心は乱れる。うちの植木鉢で育った、うちに居ついた、ただそれだけだが、すでに情のようなものが湧いてきてしまったらしい。居たものが居なくなるのはちょっと寂しい。不思議なことに大嫌いなカマキリでさえそう感じることに驚いている。


by zuzumiya | 2018-08-11 18:03 | 日々のいろいろ | Comments(0)
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