ゴキブリとの戦い

ゴキブリを前に為す術を持たない人がいる。ただ「あー、あー」と口から漏らして床を指差し突っ立っている。ゴキブリも人間に発見されたと感知してヘタに動かない。時が止まった部屋に知らせを受けた私が入って行く。突然のことで急を要するから手には瞬殺スプレーもなく、丸めた新聞紙もない。サッと辺りを見回し、手近なもので叩けるものを探す。時にはスリッパ(これがあるといちばん助かる)、時にはままごと遊具の皿だったりする。武器を持ったらサッと駆け寄り、必ず一発でしとめる。パンッ!その見事な手さばきを見てようやく言葉を思い出したのか「先生、スゴ〜イ!」の声が上がる。クラスへ戻ると「ありがとうございます」「叩けるなんてすごいですね」「すみませんでした、助かりました」と称賛の拍手である。私がゴキブリを叩いて殺した話はすぐに広まり、園の何処にいても「ゴキブリ殺しの〇〇(私の苗字)」として引っ張りだされるハメになる。
保育士には女性が多いから、当然、ゴキブリが苦手である。ゴキブリを叩けなくとも何故か素手で蝉やミミズを持てたりする。私にはそっちの方がよっぽどすごいのだが、職業柄、子どもを前に虫を怖いと怯む姿は見せられないのでそんな不思議なことができるのだろう。同じ虫でもゴキブリだけはそんな高尚な職業意識をブッ飛ばし、先生を一生活人にしてしまう。ゴキブリだけはいつでもどんな場合でも怖がっていい虫で、殺してもいい虫なのだ。その辺が面白いなぁと思う。しかし、私が知っているいちばん凄い先生は保護者を前に出てきたゴキブリを慌てて素手で掴んで殺した主任である。不衛生な園と思われてはまずいと思った彼女の職業意識は見上げたものだがマネはできない。
さて、深夜、我が家にも今夏初めてのゴキブリが出た。猫たちがゴソゴソと何やら引っ掻き、部屋を忙しなく動き回っている。怪しいと思って起き上がっていくとももが身を低くして隣の部屋のワゴンの下を覗いている。瞬時にゴキブリだと分かった私は履いていたスリッパを手にし「がんばれ、もも、何とか追い出してくれ」と声をかけた。急なことで階下にあるスプレーを取りにも行けない。ももが前足を入れてゴキブリを掻き出そうとする。逃げた。思い切ってワゴンを退ける。ゴキブリはベッドの下に入った。ももが追う。ベッドの下で何がどうなっているのかわからない。こちらからはももの膨らんだ尻しか見えない。妹分のチビもいつでも加勢できるようベットの反対側でスタンバイしている。ももの尻が動かない。まさか、仕留めて食べてる?慌てた私はベッドをエイヤッとずらした。チェストの側面にゴキブリを発見。すぐさまスリッパで叩いた。ももが追い込み、私が仕留めるセットプレーの勝利である。瞬殺スプレーがなくとも勝ち得たことのうれしさ。真夜中にもかかわらず、大好物のカニカマを褒美にたんとあげたのだった。



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by zuzumiya | 2018-07-14 05:42 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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