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行くところがあるシアワセ

ここのところ『先生と迷い猫』『グーグーだって猫である』(3回目)『パンとスープとネコ日和』『マザーウォーター』(2回目)の映画を見てきてわかったことがある。猫も人間も町の中をあっちへ行ったりこっちへ行ったり、好きなように行くところがあるってことが、実はものすごく大事で幸せなことなんだよなと思った。
『マザーウォーター』のもたいまさこさんなんて、実は独居老人なんだけど、猫みたいにすたすた町の中を歩いては豆腐屋さんで出来立ての豆腐を店先で食べたり、銭湯の赤ん坊を寝かせつけたり、八百屋で旬な春野菜を選んだり、川原の椅子でぼんやりうたたねしたり、公園のベンチでお弁当広げたり、会う人会う人に「今日も機嫌よくやりなさいよ」と挨拶したりして、その時々に行くところ行きたい場所が町のなかにちゃんとあって、それなりに忙しく楽しく毎日を暮らしてそうでいいよなと思った。町とその中で暮らす人々の自然なやりとり、空気感みたいなものを日常として大事に描いている映画たちなんだけど、そういう町と人の暮らしぶりって実は憧れていたんだなと思い出す。
考えてみれば映画だけじゃなく小説もその手の“町と人もの”を選んでいる時がある。小川糸さんの『喋々喃々』は谷中だったし、今度の新作『ツバキ文具店』は鎌倉が舞台だ。群ようこさんの『れんげ荘』シリーズは吉祥寺だっけ? そういえば、小さい頃も本の見開きにこれから始まる物語の舞台の地図が描かれているのを見るとワクワクした。
こういう映画や小説を選ぶ時というのは、たぶん心身ともに疲れていて、いろいろ面倒でうざったいのに人恋しいところもあって、でもちゃんと、もっと丁寧に毎日を暮らさなきゃなとか少し反省気味に思っている時だ。それに加えて、なんだかんだ考えられる暇というゆとりがあるのも外せない。そういうのが重なってこの手の作品の滋味がすーっと入ってくる。いろいろ人生で妥協したりなんかして、さほど好きでもない町になんとなく暮らしているが、もうちょっと外を歩いてみようかなとか、なじみの店を持たずに暮らしているのも寂しいもんだよなとか感じてしまう。でも、映画レビューで「こういう生活を2、3日やってみるけど続かない」というようなことが書かれてあって、思わず笑ってしまった。棚にしまってあった雑誌クウネルを、ふと思い出して手にとって読んで、それから姿勢を正して部屋の掃除にかかる。そういう効果とちょっと似ていて可笑しい。
by zuzumiya | 2016-04-29 08:59 | 日々のいろいろ | Comments(0)
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