『いつか読書する日』
私の日々のだいたいは低迷しているから、本や映画に楽しみを求めることが多い。
最近は目の老眼化が進んでいるのか、日によって本の字がぼやけてしまって、ものすごく本を近づけないと読めない。単行本は持つのに重いから、内容がよほど面白くなければ疲れて嫌になって放り投げてしまう。末井昭さんの『自殺』もほんとうは“読めた”内容なのに中途で挫折したのは目のせいだと思う。保坂和志さんの『人生を感じる時間』は文庫本だが、今度は内容が濃いので、肉体労働をして帰ってきた体には読書の姿勢を維持してるだけで辛く、寝転んで読むうちにうつらうつらしてしまう。
ここ最近は、本も映画もクリアな目で頭で、見られたことがないような気がする。
そうなると楽しみがなくなるので、さらに欲求不満で落ち込んでくる。
すると、ふっと思いだす映画がある。
『いつか読書する日』という非常にマイナーな映画。
主演の田中裕子がとにかくよく働く。地元から一歩も外に出ず、50も過ぎてるのに結婚もせず、もちろん浮いた噂もなく、坂の多い町を毎朝日が昇る前からひたすら走って牛乳配達をし、昼間はスーパーのレジ打ちをして、唯一の楽しみは読書という平凡すぎる毎日を淡々と生きている。ほんとうは心の中に学生時代に付き合った想い人がいて、両親の都合で二人は別れなければならなかったのだけれど、彼もまた地元を離れないで、末期ガンの妻の世話をしていて、町で見かければお互いに自然に目で追う仲なんだけど、そういう秘めた恋物語は何故か置いといて、私はこの映画の田中裕子の見事な働きっぷりと淡々と繰り返される彼女の静かで芯のある日常が妙に好きなのだ。
この映画を見るたびに、「働こう!」と思う。カレンダーにバツ印をつけるように「一日一日をこなしていこう!生きていこう!」と思う。
たしかスーパーの同僚で子持ちの出戻りが店長と不倫してて別れた時に、田中裕子に「寂しくないですか?夜とか」って話しかけて、田中裕子が「いいのよ。クタクタになれば」と返すシーンがあるのだけど、あのセリフが昔も今も身にしみる。
落ち込んで、寂しくなって、人恋しくなったとき、あるいは、月曜日また一週間が始まるという朝、まだ夜も明けない暗い坂道を牛乳瓶をカチャカチャ言わせて石段を上っていく田中裕子が見える。スーパーへ向かう道を必死に自転車こいで走っていく田中裕子が見える。疲れて読書の最中に寝入ってしまう田中裕子が見える。
一人で生きていく日常がぜんぶそこにある。頑張らなくっちゃな、という気になる。
最近は目の老眼化が進んでいるのか、日によって本の字がぼやけてしまって、ものすごく本を近づけないと読めない。単行本は持つのに重いから、内容がよほど面白くなければ疲れて嫌になって放り投げてしまう。末井昭さんの『自殺』もほんとうは“読めた”内容なのに中途で挫折したのは目のせいだと思う。保坂和志さんの『人生を感じる時間』は文庫本だが、今度は内容が濃いので、肉体労働をして帰ってきた体には読書の姿勢を維持してるだけで辛く、寝転んで読むうちにうつらうつらしてしまう。
ここ最近は、本も映画もクリアな目で頭で、見られたことがないような気がする。
そうなると楽しみがなくなるので、さらに欲求不満で落ち込んでくる。
すると、ふっと思いだす映画がある。
『いつか読書する日』という非常にマイナーな映画。
主演の田中裕子がとにかくよく働く。地元から一歩も外に出ず、50も過ぎてるのに結婚もせず、もちろん浮いた噂もなく、坂の多い町を毎朝日が昇る前からひたすら走って牛乳配達をし、昼間はスーパーのレジ打ちをして、唯一の楽しみは読書という平凡すぎる毎日を淡々と生きている。ほんとうは心の中に学生時代に付き合った想い人がいて、両親の都合で二人は別れなければならなかったのだけれど、彼もまた地元を離れないで、末期ガンの妻の世話をしていて、町で見かければお互いに自然に目で追う仲なんだけど、そういう秘めた恋物語は何故か置いといて、私はこの映画の田中裕子の見事な働きっぷりと淡々と繰り返される彼女の静かで芯のある日常が妙に好きなのだ。
この映画を見るたびに、「働こう!」と思う。カレンダーにバツ印をつけるように「一日一日をこなしていこう!生きていこう!」と思う。
たしかスーパーの同僚で子持ちの出戻りが店長と不倫してて別れた時に、田中裕子に「寂しくないですか?夜とか」って話しかけて、田中裕子が「いいのよ。クタクタになれば」と返すシーンがあるのだけど、あのセリフが昔も今も身にしみる。
落ち込んで、寂しくなって、人恋しくなったとき、あるいは、月曜日また一週間が始まるという朝、まだ夜も明けない暗い坂道を牛乳瓶をカチャカチャ言わせて石段を上っていく田中裕子が見える。スーパーへ向かう道を必死に自転車こいで走っていく田中裕子が見える。疲れて読書の最中に寝入ってしまう田中裕子が見える。
一人で生きていく日常がぜんぶそこにある。頑張らなくっちゃな、という気になる。
by zuzumiya
| 2013-12-09 15:52
| わたしのお気に入り
|
Comments(2)
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by
BBpinevalley at 2013-12-09 16:16
はじめまして。
その映画、どこかで見たような気がします。でも、もう一度探して、観てみたいと思います。
田中裕子、良い女優さんですよね。
私の目も、昔はとても良かったのに、最近ではメガネなしには本も読めないし、運転も夜はメガネなしにはダメです。
でも、本なしには眠れないし、車なしには生活できないところに居るので、メガネが必須と云うことになります。
その映画、どこかで見たような気がします。でも、もう一度探して、観てみたいと思います。
田中裕子、良い女優さんですよね。
私の目も、昔はとても良かったのに、最近ではメガネなしには本も読めないし、運転も夜はメガネなしにはダメです。
でも、本なしには眠れないし、車なしには生活できないところに居るので、メガネが必須と云うことになります。
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zuzumiya at 2013-12-15 16:49
はじめまして。コメントありがとうございます。この映画はボケの話や児童虐待などサイドストーリーもあって、焦点がぼやけて何だかつまらないという人と心にずっと秘めていた中年の恋をいいなあと思える人とにはっきり評価が分かれているようです。私は中年の恋物語もいいのですが、ブログで書いたように、働く田中裕子に自分の日常を重ねて見てしまいます。壁一面の本棚にぎっしりと詰まった本。岸部一徳が驚いてぐるりと見渡すシーンがありましたが、彼女の積年の孤独が見て取れました。是非、もう一度見てみてください。図書館から本が続々届くのに、読みこなせない自分に腹が立って、ついに明日、読書用のメガネを買いに行きます!(笑)。よかったら、また覗いて下さいね。
ふだんの暮らしに息づいているたいせつなもの、見つめてみませんか?
by zuzumiya
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