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「そうとは知らずに」の幸福

「そうとは知らずに」の幸福_a0158124_1544294.jpg今まで書きたくても忙しくて書けなかった、
おススメの絵本たち。

まずは『いつもだれかが…』(ユッタ・バウアー作)。
祖父の病室を訪ねる孫、その孫に祖父はいつでも話をする。
自分の幼い頃からの「何をしてもうまくいっていた」日々の話を。
「いろんなことがあったけど、まあ、運がよかったなあ…」
「わしはとてもしあわせだった」としみじみ語る祖父。


この祖父の、やんちゃな少年時代からつらい戦争を経て、結婚し、年老いて病院のベッドで寝たきりになっている今の今まで、天使がずっとそばにいる。
少年時代、バスに轢かれそうになっているところを天使が必死にバスを押さえてたり、青年時代、レンガ積みの仕事をしているとき、頭に落ちてくるレンガを天使があわてて受けとっていたり、孫と海水浴しているときには、天使がサメを捕まえて口をふさいでたり…。
すべてがうまく行っていたのは、必ずそばに天使がいて助けてくれたり、守ってくれていたから。その、何にも知らない本人に対して、天使だけがあわてて必死になってる絵がとてもユーモラスで温かな笑いを誘う。

でもね、この絵本の天使、戦争の時だけはどうにもできなかった。
ユダヤ人の友だちヨーゼフがいなくなるのを、頭を抱えてとめられなかった。
食べ物がなくなって、配給の列に並ぶ青年には、肩にそっと手を置いてやることしかできなかった。天使にもどうすることもできない、そんな「間違い」を人間は自ら選択してしまったんだ。天使の気持ちがよくわかって、読み手もここだけ心がしんとなる。

ああ、でも、いいなあ。
みんな一人ずつに、こういう天使がついていてくれるといいのになあと思う。
いや、案外、ついていてくれてるのかも。
自転車に乗ってて車とぶつかりそうになったけど、すれすれで大丈夫だったとか、ぶらっと入ったお店でずっとほしかったものを偶然見つけたとか、落ち込んだときに友だちから「どうしてる?」って以心伝心のメールがきたとか、失恋して泣いてたらお腹がすいちゃって、お菓子を片っ端から食べたらどうでもよくなったとか、思い出してみると実はいろいろあるんじゃないかな。

きっとこの絵本のように天使はいてくれるんだよ。そう思って生きていよう。
なんかいいじゃない? そのほうが。
どんなに孤独で一人ぼっちの夜でも、目に見えない天使が眉を八の字にして寄り添っているんだと想像してごらんよ。だからこんなに肩が重いのか、なんて想像してごらんよ。
悩んで考えて考えて、そのうち疲れて眠たくなってきて、「もうどうでもいいや、とにかく寝たい」と思ったら、もしかしたら、天使が青い顔して必死になって目の前で振り子を振って、催眠術かけてるのかもよ。
「一人で今まで生きてきた」なんていきがっちゃいけないなと反省したり、なんだか生かされている今にほんのり感謝したり、実に素直になれるいい絵本です。
by zuzumiya | 2011-09-12 15:52 | わたしのお気に入り | Comments(0)
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