カテゴリ:わたしのお気に入り( 201 )

今を歌え!

ネットのニュースを見てびっくりした。
エレカシがNHKの紅白に出場する。凄いことだ。ああ、ほんとうにビッグになったんだなぁと感慨深く思う。そして、こうなったからは来年は更に躍進すること間違いないだろう。さぞかしメンバーや家族、親族、友人、関係者らは喜んでいるだろう。もちろん、売れないエピックの頃からずうっと支えてきたファンだってそうだ。こんな日が来るとは…、だろう。紅白なんて、とは言わない。日本の歌い手ならこの歴史ある晴れ舞台には誰もが本音では立ちたいはずだ。売れて、知名度を上げなければオファーもないのだから。宮本さんはロックの人だが、意外とこういう権威に弱そうである。今頃、うれし涙じゃないだろうか。さて、この最高な年の最高な締め括りにどんな曲を持ってくるのか、セットは?、衣装は? 楽しみでしょうがない。
とはいえ、実は私自身は最近ではめっきりエレカシは聞かなくなってしまった。以前にも書いたように専らクラシックのピアノ曲を聞いている。実は「マスターピース」あたりからなんとなく心が離れてきて、前作の「レインボー」では心底気に入ったのは「なからん」だけだった。その後、幾つかシングルが出ていたがメロディはまだしも歌われていること(つまり、フレーズ、歌詞)にかわりばえがなくて、正直、飽きがきていたことを告白する。宮本さんの歳に抗いつつ、それでも更に上を目指す、勝ちに行くという飽くことない熱情に私自身の心の老いがだんだん付いていけなくなったんだろう。互いがまだ若かった頃には確かに悩ましき心の代弁者だったはずなのに、いつからか置いていかれた、そんな気がする。「心は巧みなる画師の如し」という言葉があるが、確かに宮本さんのように勝つ、勝つ言っていると本当に勝負運を引き寄せて物事に打ち勝てるのか、と今回思うはめになった。
新曲「今を歌え」はそんな置いてけぼりをくらった(いや、自ら彼の言葉を信じずに後ろを向いてしまった)私でも久しぶりに心が揺さぶられる曲だ。歌詞でいえば、やはり「今宵」で歌ったような、これぞ宮本節とわかるさほど変わりばえしないいつもの言葉が並ぶ。この曲でも主語は意識的に「わたし」を用いている。宮本さんの凄いところはメロディに乗せるとこの何度も耳にしてきたようなシンプルすぎる歌詞が言葉以上に深く沁みてくることだ。そうであるために、素人の私は「もっと何とかできないものか」と言葉をいじくり回したくなるのかもしれない。
「わたしは何度も生まれ変わり、そして歩いてきたのさ」なんて、一見何ということもない歌詞だが、聴きながらしみじみと「あぁ、そうだった、そうやって生まれ変わってきたのかもしれないなぁ」と思いあたる。そんなふうに歌われて、自分の幼少期から青春期、そして中年の今までの山あり谷ありの人生の幾つかの場面が思い出されて、「そういやぁ、大小にかかわらずいろんな夢を持ってその都度コロリと人が変わったように追いかけては挫折して正当化して、やがてそんなこともプイと忘れて、また人が変わったように次の興味へ移って行ったもんな」と苦笑する。そうやって生きてきたのはほんとに宮本さんの歌う「何度も生まれ変わり」だった。過ぎ去ったたくさんのあの頃のかわいくて無様でバカ正直で怖いもの知らずで健気な自分にそっと「ご苦労様」と語りかけたいような気分になる。そして、今があることを、こうやって部屋で椅子に座ってこの歌にじっくり耳を傾けていられる今があることをほんとうに心から幸せに思う。ああ、君に会えてよかったよ、ほんとに、なんて柔らかな慈愛に心が満ちてくる。
でも、そんな思い出に浸って切なくなってしまいそうな歌の後半で「今、飛びたて、今、輝け、今、戦え、心よ」と「今」をたたみかけて歌が続く。何事も諦めてしまいそうになる自分に「そうか、今なのか、この今にまだ光はあるんだ、力はあるんだ、信じろ、心よ奮い立て」という気にさせる。宮本さんが自分自身に言い聞かせるように何度もまっすぐ歌うから、それはどこか彼自身の迷いも憂いも影さえも想像させ、老いに向う後ろ向きになりがちな同じ中年の人間としてさもありなんとも思うし、そのシンパシーが離れてしまったこの手をもう一度引っ張りあげてくれたようで、非常に彼らしいあたたかくてそして厳しいメッセージをくれたように思えるのだ。この歌を何度も噛みしめるようにして、空を見て、日々を送っている。来年はまたライブに行きたいものだ。


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by zuzumiya | 2017-11-18 15:32 | わたしのお気に入り | Trackback | Comments(0)

よだかがここにもいた

今日、早見和真さんの『イノセント・デイズ』を読み終わって、これに似た話を私は知っている、と思った。辻村深月さんの解説まで読み進めて、自分では宮沢賢治の『よだかの星』だと確信した。自分が以前書いた『よだかの星』の感想(2010年の2月25日)を再び読んでもみた。深月さんと同じく「美しい」という言葉も使っていた。主人公田中幸乃の最期の姿は星になろうとするよだかのように私には思える。『よだかの星』の物語を大事に想っている方々に『イノセント・デイズ』をおすすめしたい。

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by zuzumiya | 2017-10-15 17:15 | わたしのお気に入り | Trackback | Comments(2)

ネコメンタリー、いいよ。

NHKのEテレでやっている「ネコメンタリー 猫も、杓子も。」がすごくいい。
作家と飼い猫の暮らしのドキュメンタリーだが、先日放送されて録画しておいた「吉田修一さんと飼い猫の金ちゃん銀ちゃん」を今しがた見てきた。まず作家の住まいが見られるのは興味深いが、カメラもお構いなしの飼い猫とのいつもの自然な風景が見ているこちらをほっこりさせてくれる。
吉田さんは白黒写真が飾られた都会的で洗練されたインテリアのマンションに一人で住んでいて、ほとんど猫たちに話しかけないで過ごす。自由気ままに歩いたり寝転んだりする猫たちを時に見ながら、時に横にはべらせながら、ゲラのチェックや読書なんかをする。その互いに何にも縛られず自由でいて、それでいて親密な静寂は猫だからこそ生まれるもの。犬ではこうはいかないだろう。名付けて、猫がくれる「猫時間」。この画面から流れてくる猫時間の心地よさを共有できるから、是非見て欲しい。次回は村山由佳さん。今夜、11時からの放送である。春に養老孟司さんと角田光代さんが放送されて大反響だったというが見逃してしまった。今後は週一ぐらいで続けていってほしいくらいだ。

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by zuzumiya | 2017-10-09 16:00 | わたしのお気に入り | Trackback | Comments(0)

バッハ好き

a0158124_21374781.jpg給料が入ったので欲しかったアンヌ・ケフェレックのピアノの「J.Sバッハ作品集〜主よ人の望みの喜びよ」のCDを買った。素晴らしい。やっぱり私はモーツァルトよりドビュッシーよりバッハが好き。そして、うちの猫たちもそうにちがいない。バッハは孤独への慈しみにあふれている。



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by zuzumiya | 2017-10-01 20:55 | わたしのお気に入り | Trackback | Comments(0)

夏が来れば思い出す

私は昭和な女なもので、夏といえば蚊取り線香で、ボディーシャンプーといえば、シーブリーズなのである。髪の毛だって、どんなにごわついたって揃えのシーブリーズのリンスインシャンプーで洗う。神奈川生まれだが、別に湘南のサーファーだったわけではない。でも、それでも、私にとっての夏のシャワーにはシーブリーズの爽快感が絶対欠かせないのである。で、問題は、今の季節。日中は残暑の名残でまだまだ汗をかくが、朝方はタオルケットじゃ寒くて寝てられないようなこの時期。昼間は蝉が鳴き、夕方にはコオロギたちの大合唱となる今頃。ほとんど夏の終わりかけのこの時期に悩ましいのが洗面所の戸棚に残っているシーブリーズの詰め替え用パックなのである。9月の声を聞いて、浴室のボトルにはほぼ満タンに入っていて、戸棚にもうワンパックずつ残っていることの焦りったらない。気候が涼しくなってからのシーブリーズのメントールの冷ややかさほど調子っぱずれな頓珍漢なことはないのである。シャワーを浴びるたび「ちがうなぁ」とうめかねばならないことの情けなさ。シーブリーズはカブトムシの飼育ゼリーと同様、夏の盛りのあくまで季節商品なのである。なんとしても10月までシーブリーズをもたせるわけにはいかないのである。
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by zuzumiya | 2017-09-06 22:36 | わたしのお気に入り | Trackback | Comments(0)

こんな映画と音楽、気に入ってます

a0158124_0244539.jpg今日はジャームッシュの映画『パターソン』を見に行くことにした。息子に駅まで車で慌てて送らせ、無事、時間通りの電車に飛び乗って上映時間の40分前には新宿に着いた。ちょっと喫茶店で軽く昼食をとってから行ったら、もう満席で見られなかった。甘かった。昨日が初日で永瀬正敏の舞台挨拶まであったその翌日の日曜日である。新宿だし、4年ぶりの新作だし、ジャームッシュファンが駆けつけて当たり前なのに、30分切っての入館でチケットを買おうなんて、どうかしていた。これぞ地方ボケである。しかたがないから、武蔵野館で掛かっている第二候補のベトナム映画『草原に黄色い花を見つける』を2時間待って見ることにした。見られなかった『パターソン』のパンフレットを買い、冷房のきいた館内から出ずにパンフレットを熟読して予習しようと思った。だが、だんだん寒くなってきて急遽カーディガンを買いに向かいのビックロに行ったりした。「なんて日だ!」と内心、悪態をつきながら。
『草原に』の館内はお年寄りばかりが目立った。ベトナムのひなびた農村地帯が舞台で、青々とした田んぼの広がる畦道を子どもらが無邪気に走って行ったりすると、どことなく昔の日本の貧しい田舎の風景と似ていて、お年寄りたちは自分の幼かった頃を重ねて見ているのだろう。笑いが出たりしている。私はどちらかというと田園風景の詩情より『青きパパイヤの香り』や『夏至』の方が好みで、それはたぶん、私がインテリアに興味があるせいだと思う。話としては悪くはなかった。
a0158124_025473.jpg館内にあった次回作のチラシで『ポルト』という映画があって、これにもジャームッシュが製作総指揮で関わっているというので、『ギミー・デンジャー』の後の公開(9月30日)だから、8月から9月の武蔵野館はジム・ジャームッシュ月間である。どんどん出かけて行こうと思う。
a0158124_030414.jpg音楽はまた「雨と休日」から1枚CDを買った。今年の夏は雨や曇天ばかりで夏らしい日差しが少なくて、立秋を過ぎ夏休みが終わる今頃になってようやく強い日差しが戻ってきている。去りゆく夏をぎゅっとかみしめようと『bahamian ballads』(アンドレ・トゥーサンのベスト盤)を買った。一挙に部屋がカリブ海のゆるさに包まれて、「おお、これぞ夏!」って感じで、思わず歌声にステップを踏んだ。ワールドミュージックに興味がなかった昔が嘘のようだ。これでしばらくは陽気にいける。
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by zuzumiya | 2017-08-28 00:30 | わたしのお気に入り | Trackback | Comments(0)

ジャームッシュの新作2作に期待。

a0158124_0371376.jpga0158124_0373899.jpgジム・ジャームッシュが4年ぶりに新作を撮ったそうです。その名も『パターソン』。詩が好きなバスの運転手パターソンの何気ない日常の暮らしを描いたお話みたいです。“日常映画”という言葉で紹介されていました。いいネーミングです。前作のインテリ吸血鬼のカップルのお話もすごく私好み(ティルダ様が出ているし)だったけれど、今回は平凡な、でも愛おしい日常というテーマが何よりエッセイ好きな私にはツボなのです。日常をどうチャーミングに撮るか。それは監督が日常の暮らしのどこに目をつけて素敵だとか恩寵だとかを感じているか、その人間の感受性やものの考え方がもろに出ますから、映画としての演出や脚本力というよりジム・ジャームッシュという人物の人間性をわりとスムーズに窺い知れる作品ではないかと私は期待しています。詩人がふつうの日常の暮らしの中に詩を見つけるように、きっと日常にはいろんな素敵なものが散りばめられているんでしょう。そういう観察眼だったり、感受性だったり、それらが自由に伸び伸びと働く心の余裕だったり、そういうものを本当は誰でも持っていて、そういう自分にさえ立ち返れば、お金を払って特別な何処かに行かなくても、制限ばかりの今いる此処が幸福のありかになる。そういうふうに日常の見方を変えてくれるから、私は文学でも身辺雑記的なエッセイを好むんですが、ただ何でもない日常を“作品”ばえするためのテクニックはきっとあるんでしょうね。なんてったってジャームッシュですもんね。イギーポップのドキュメンタリー映画も9月には公開だそうで、そちらももちろん気になっています。ジャームッシュは前作も新宿は武蔵野館でした。武蔵野館さん、ありがとう。




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by zuzumiya | 2017-08-26 16:52 | わたしのお気に入り | Trackback | Comments(0)

おすすめ海外ドラマ『VINYL』

海外ドラマにハマることはあんまりないんだけれど、ミック・ジャガーとマーティン・スコセッシがプロデュースした70年代のNY の音楽業界のお話となると見ずにはいられない。『VINYL』(ヴィニル)Huluで10話完結、当時のいろんなバンドや歌手やアーティストのそっくりさんが出てきて演じてくれるので面白かった。さっきネットで調べてわかったが、お話の中に「ナスティビッツ」というパンクバンドが出てくるが、そのヴォーカルがカッコいいなと思っていたら、なんとミックとジェリー・ホールの息子、ジェイムス・ジャガーだという。もう30歳なんだと。


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by zuzumiya | 2017-08-24 22:50 | わたしのお気に入り | Trackback | Comments(0)

「more records」がお気に入り

埼玉の大宮にある「more records」のオンラインショップの試聴が楽しい。
「雨と休日」も試聴ができて助かるのだが、そことはコンセプトが違ってあらゆるジャンルの音楽が揃っていて、自分にとっての新たな音楽の「好き」が見つかる。ARLTというフランスの男女2人組のアルバムも小粋で良かったし、フォーキーソウルというジャンルのJames Tillmanの「silk noise reflex」の歌声も心地よかった。ボーカルの入った洋楽は普段、部屋で読書するためあまり流さないが、漫画や雑誌なんかを開いたり、ネットを見てたりする時には邪魔にならないからたまには買おうかなと思う。「more records」のスタッフのセンスあるセレクトは大いに助かっている。おすすめである。

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by zuzumiya | 2017-08-12 06:24 | わたしのお気に入り | Trackback | Comments(0)

死んだように眠れる音楽

「この世を去る60分前に聴く最後の音楽」という大胆にも挑戦的なコンセプトに惹かれて「Ending Music」というコンピレーションアルバムを買った。落ち着いたピアノがメインのアルバムはうんとこさ持ってはいるが、何せ「死ぬ前に」しかも「60分前」って時間も指定して、つまりはアルバムは天に召されるその瞬間に向ってそういう曲順で収められているんだろうということで、あまりにそそられるから買ってみたのである。で、一曲目はこれから死にゆく者がどういう心持ちになっている設定なのかは想像しがたいが、美しいかなり情緒的なピアノ曲であった。アンドレ・ギャニオン的な、はっきりと覚えられるメロディラインで、思い出が走馬灯のように駆け巡るシーンでも表しているのか、やけに美しくきらびやかな感じ。「みなさん、今までありがとう。私は幸福でした」と言わんばかりの盛り上がり。でも、はたと「これから私は死にゆくのだ」と思い出すと「人生の最後なんだからこれくらいいいのか」という気にもなる。で、聴くというよりいつものように読書しながら聞き流していたら、やっぱり猫どもはすとんと寝ちゃうわ、私もトロトロになるわでまさに死んだように眠れそうな音楽でした。一番最後の曲、すなわちこの曲を聞きおえたら私は死ぬという曲の感じは……何度聞いても覚えていない。最後まで聞き終われずに意識が飛ぶ。そういうところも妙にリアルです(笑)。埼玉は大宮にあるCDのセレクトショップ「More Records」から買いました。寝苦しい夜のお供にどうぞ。
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by zuzumiya | 2017-08-03 22:56 | わたしのお気に入り | Trackback | Comments(0)


ふだんの暮らしに息づいているたいせつなもの、見つめてみませんか?


by zuzumiya

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