2017年 02月 05日 ( 3 )

荻原魚雷さん

荻原魚雷さんにはまっている。先日の『本と怠け者』に次いで『活字と自活』を読んでいる。魚雷さんはまたしてもこんなふうに書く。
<今日もまたとくに予定のない日にありがちなことをするだろう。つまり部屋を掃除して、洗濯して、食料品を買い物して、古本屋をまわって、喫茶店で本を読んで、酒を飲んで、家に帰ることになるだろう。あまりものは持ちたくないが、知らず知らずのうちにものが増えてゆく。>
私は酒が飲めないし、近くに行ける喫茶店もない。喫茶店で純粋に本だけを読むことは憧れでやってみたいことだが、コーヒー一杯で何時間ねばれるものなのか。小心者でそんなことに気を回していたら文章が頭に入ってこない気がするので、人待ちの時以外は試したことはない。それでも暮らしの質が、生活の芯のところが、そういうものだと自分に許している、ほどよく諦めたこのゆる~い感じがなんだか魚雷さんと私とは似ていて、天野忠とか黒田三郎とか辻征夫とか詩人の好みも同じで、彼の仕事や生活のまっ正直な悩みや告白にニヤニヤしながら読んでいる。〈好きな時間に寝て起きて、好きなときに酒が飲めて本を読める生活以上の望みはない。〉だなんて、ああ、そうね、そういうものよね。なんてステキなの。作家の名前や有名な作品が情報として知ってはいても、今までは触手が動かなかった。「フン、何さ」という私の天邪鬼な性格もある。好き嫌いが激しい。古本の世界は「読みたい本がたまたま古本にしかなかった」程度の素人からしたら、ガイドがいないと歩けないような鬱蒼とした森のようで、なんだか近寄り難かった。でも、魚雷さんに<何度も繰り返して読んでいる>とか<即買いした>と書かれると「読まなくっちゃ」と傍らのiPadを起動させ、ネットの古本屋や図書館に予約を入れまくっている。そう、私にとって魚雷さんは本の世界の扉をまた新たに開いてくれた大切なガイドだ。彼が「こっちにおいで」と手招きするなら、自然と行ってみようという気になる。もうそれはレンアイっぽい微熱を含んでいる。私も死んだ時のために、あまり本は増やしたくないと思っていた。でも、もういいやと思っている。
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by zuzumiya | 2017-02-05 17:06 | わたしのお気に入り | Trackback | Comments(0)

灯油屋との戦い

さっき、久しぶりに灯油の移動販売車から灯油を買った。
いつもなら夕飯の買い出しのついでに、夫と一緒に例の安いガソリンスタンドで買うのだが、今はまたしても家庭内離婚の真っ最中でここ数日間は口もきいていないのである。夫は夫で何を考えているのか知らないが、今さら漢字検定の試験だそうで今日は午後から外出している。ま、人それぞれ価値観が違うわけだから、私は何も言わないでおく。
灯油の移動販売車とは苦い思い出ばかりである。
彼らは通常、玄関先に置いてある赤いポリタンクを目印にやってくるので、何も置いていない路地は運ちゃんが一瞥してスッと行ってしまう。私のようにいつもは買わないけれど、今日は急に必要になった人にとっては販売車を捕まえるのはひどく難しいのである。遠くからキンコンカンとメロディが聞こえたら何をおいてもすぐにポリタンクを持ち、玄関から飛び出る。音を頼りに走って販売車を見つけるや、ポリタンクを高らかに掲げてサイドミラーに恥知らずな姿を映し、ミラー越しに運ちゃんと目が合わないと前出のようにスッと行ってしまうので買えないのである。
9階に住んでいたマンション時代はひどかった。メロディが聞こえて、私がベランダへ飛び出てマンションの下で給油を始めたのを確認し、「お父さん、灯油屋が来た!」と夫に知らせるやいなや、夫はポリタンクと財布を握りしめて慌ててエレベーターに乗る。1階に着くと、既に車は先の交差点の角を悠々と曲がって行く。膝の抜けたジャージとサンダル姿で手には赤いポリタンクを握りしめた夫は道の真ん中でどれほど落胆したことか。帰るなり「タンクをぶん投げてやりたくなった」と嘆いた。夫だけじゃなく私も挑戦したが、余裕があるように見えてエレベーターが曲者でまんまと逃げられた。なるべく多くの住宅街を回って早く灯油をさばきたいのか、10階建てのしかも老人が多いマンションの前に止まっておきながら、彼らはほんとにあっさりしていて客につれなかった。
今回は音が聞こえてすぐに(音の遠近を判断しているとまんまと逃げられることが多い)読んでいた本をほっぽり投げて玄関から飛び出たために無事、車を捕まえることができた。が、金の用意をしていなかった。18リットル1580円はここのところ変動なしだが、玄関先にタンクを置いたまま、部屋に戻って「1000札2枚かな、いや待てよ、どっかに500円玉があったはずだ」と親切心で探して玄関に戻ったら、もう既に運ちゃんが「まいど~」とニッコリ笑いながら灯油の入ったポリタンクを置きに来ていた。いつもの18リットルのあたりに灯油が透けて波立って見えた。しかし、今回はポンプで吸いきれなかった少しの量が残っていたはず。だとすれば、もう少し上のあたりまで灯油が来ていてもいいのでは。さては、私が金を取りに戻っている隙に17リットルあたりで給油を止めてしまったのではないか、と疑念が湧いた。灯油屋との過去の苦い思い出から、私はどこか彼らを信じていない。買う時には必ず運ちゃんの傍に付いて18リットル入ったか、メーターの数字を確認するようにしている。ところが不覚にも今日はそれができなかった。せっかく車を捕まえても、運ちゃんにまたしてもしてやられた気がして、なんだか落ち込んでいる。
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by zuzumiya | 2017-02-05 15:41 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)

贅沢って何だ?

これがないと、或いはこういうことをしてないと、生きてるのがつまらない、毎日がつまらない、人生に張り合いがない。どっちかっていうとしんどいことばかりの人生を仕方なくこれからも生きて行くために、自分で頑張って働いて稼いだ金で、他人に頼らず自分自身を喜ばそうとして、買ったり、やったりしていることに対して、そういう必要極まりない奥深い心情を知らない他人が「贅沢だ」のひと言で切り捨てるというのは失礼千万じゃないか。人の心の生き死に何がどれほどかかわっているかはわからないからこそ、価値観の違いとして言葉をわきまえるものだ。
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by zuzumiya | 2017-02-05 07:38 | 降ってきたコトバたち | Trackback | Comments(0)


ふだんの暮らしに息づいているたいせつなもの、見つめてみませんか?


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