2016年 08月 14日 ( 3 )

鏡を見る

台所でアイスキャンディーを舐めていたら、夫がのっそり出てきて言った。
「俺、頭にガムテープ付いてた。ガムテープ付いてるの気づかないで買い物行ってた」
「え?マジ?」
「やっぱり、鏡見る習慣ないからかなあ」と夫。
「ガムテープなんて、いつどこで付いたの?何色?まさか茶色の?それとも透明な養生テープ?」
「透明な養生のほう。たぶん、冷蔵庫の上から落っこちたやつ」
「猫の罠に置いといたの?」
「そう」
「ベロンと長いやつを頭から垂らしてたの?」
「ううん、短かったから気付かなかった」
夫は何処へでも上りたがる猫のために養生テープをハエ取り紙のように裏返しにして罠のようにあちこちに仕掛けている。猫でも犬でも実は生温かい毛を触りたいだけでほんとうは生き物は好きじゃない。特に言うことをきかない猫なんぞは可愛げがないと餌代も出さない。まったくの自分の気まぐれで触りたがるので猫の方はめったに寄り付かない。私は世話好きでメダカでも猫でも植木でも、子育てが終わったというのに保育士として他人の子まで面倒見ているというのに。それで朝の4時に猫が毛玉を吐くのにえづいたら、ちゃんと飛び起きてビニール手袋と消毒スプレーでもって対処してやるし、どうして此処にと首を傾げるほど猫砂のトイレから外れた所にうんこがコロンとしてあっても怒らずに片付けてやる。だから、夫は天罰が下ったんだと腹の中では思っていた。
「でも、この間も俺、襟の所にMサイズのタグつけたまま会社行ってて、しばらく誰も教えてくれなくて、電通映画社だった奴が付いてますよって教えてくれて。何で教えてくれないのかねえと言ったら、此処はそういう会社ですよだってさ」と夫。
ハハハと笑って、「鏡ぐらい見なよ」と私は言った。でも、そうは言っておきながら、私は夫の出がけに「行ってらっしゃい」と言いに出て行くことはあるが、そのようにしようと朝努力はしているが、きちんと夫の身なりを頭のてっぺんから爪先まで見ていないことに気づいた。あれは遠回しに「妻なんだから夫をもっとちゃんと見るべきだ」と言っているのだろうか。まさか、私の責任だと?
私は日に何度か鏡を見てる。意識しているわけではないが、考えてみると見てる。
それでもって鏡の前で最後に笑っている。こう書くとうす気味悪いが思い出すとそうである。でも、そんなことは夫には言えなかった。




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by zuzumiya | 2016-08-14 18:11 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)

穴を掘る私

暮らしの中でささやかでも心打つ美しいもの、素敵な事柄を拾い集めたいと清らかな心掛けで始めたブログであった。だが、どうだ。年をとるごとに心掛けとは正反対の愚痴や悪口ばかりを書いている。もともと面と向かって他人にバンっと意見を言えない弱気な人間である。昔、編集者に「自己評価が低すぎますね」と冷たく言われたこともある。ほんとうだ。ずっとふらふら生きてきたから、他人に何かを言えるほど自分に自信がないのである。でも、腹の中ではいろいろと考えに考えているのだ。最初は“王様の耳はロバの耳”の話のように、地面に穴を掘ってその中に私は喋っているつもりだった。でも、ひょんなことから暗い穴は水道管のように四方八方に繋がっていることがわかってびっくりした。ネットは穴ではなかったのだ。当たり前だが。でもきっと、今だに多くの人がネットは自分一人が掘った何処にも通じていない暗い穴だと思っている。じゃなきゃ、あんなにいろいろブチまけない。私は言うべき人に言うべきことを言うべき時にきちんと言えないから、仕方がないから穴に吐いてきた。きれいな心掛けでいなきゃと思いつつ、体面や見栄ばかりじゃなくそういうエッセイや文章がほんとに好きなんだよと思いつつ、弱さに負けて全く反対の素敵じゃないことを書いてきた。でも、どこかでこれが人間的なんだよと知りながら。
で、前置き(言い訳)が長すぎた。わけがわからなくなる前に書いておこう。うちの斜向かいの家のオヤジが毎朝、5時頃にシャワーを浴びる。朝早いのはまあ、いいだろう。私も早い。嫌なのは必ず大きな咳をして必ずガラガラと痰をからませるのである。それも何回もだ。腹の底から、いや肺の底から、いや気管の壁のヘリから身体全体を震わせて粘りつく痰を「ガラガラぺッ」と剥ぎ取り吐き出している感じで、私はそのやけくそとも思える力強い咳が大嫌いなのである。なぜだかその度に「ああ、今出たな」と吐き出された痰のことが浮かんでしまう。水に流しているのか、ティッシュに取っているのかまで考えてしまう。気持ちが悪い。そして、奥さんや家族のことを思いやる。ああいう男の、ちょっと野卑な、ああいう咳にいつものことと慣れてしまっているのだろうか、と。私は絶対、慣れないな、と。たぶん、うちの風鈴がうるさいと言ってきたのはあの家である。たしかに大風の日に風鈴をぶら下げっぱなしにしていたのは悪かった。だが、あんたの家の亭主の咳も耳障りなもんだよと言ってやりたいが、言えないので今日も穴を掘ったしだいである。私は何処へ向かうのだろうか。









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by zuzumiya | 2016-08-14 09:35 | ちっちゃい器で生きていく | Trackback | Comments(0)

発見

夫がテレビでオリンピックを見ながらつぶやいた。
「どうして卓球選手のガッツポーズって、あんなにちっちゃいんだ?」
脇をギュッと閉め、背中を丸めて「小さく『ヨッシャ』っていう感じだろ?」
笑ってしまった。そういえばそうだ。大きくバンザイして喜ぶ姿なんて見たことがない。私は考えた。
「闘うフィールドがちっちゃいからなんじゃない?サッカー選手なんて走り回った末に股間に手をやってバカみたいに踊り出すもんね」
「そっか。畳一畳ぐらいのとこで闘ってるからか」

なんだかんだ言ってもこういう会話ができる相手だから、私は夫と離婚に至らないのだ。





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by zuzumiya | 2016-08-14 01:12 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)


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