暮らしのまなざし

2016年 08月 13日 ( 1 )




フレンドリーな猫

引っ越してすぐにやたらカラスの多いことに気がついた。もともと農家が多く畑や昔からの巨木が悠々と立ち繁っている地域で、まるで鬼太郎の家の近所みたいだ。たぶん、同じ市内でもカラスのねぐらに引っ越して来てしまったんだろう。
で、今日は猫の話である。うちの猫は外を眺めては、家々の屋根や電線にとまっている鳥という鳥に、雀でも鳩でもカラスでも「カッカッカッ」と変なふうにわざと声を作って短く鳴いて、まるで話しかけているようなのである。凄いぞと思っていたが、ある時ネットで猫というものがみんなそうすることが分かってガックリきた。馬鹿親みたいに自慢しないでよかった。朝っぱらから「カッカッカッ」という声に起こされて「どれどれ」と窓を覗くと、うんと遠くの電線にひっそり小さく鳥影があって、あんなものに必死に声を発していたのかと思うと健気になった。飼い主に似て、フレンドリーなのである。
この夏、3年ぶりに猫を洗うことに決めた。それでベランダに2段の棚板があるケージを買った。何とか洗い終わってもドライヤーで乾かしたら飛び上がってそれこそ心臓麻痺で死んでしまうだろうから、天日干しにするのである。さぞや体からドス黒い水が流れ出るだろうと思ったが、案外きれいだった。猫の舌の洗浄力はアタックよりも凄いのだ。
で、ケージに入れると夏の熱風ですぐに乾いた。居心地がいいので気に入ったらしく、それからは朝早くの日差しが強くなる前と夕暮れ時に入れてやるとのんびり棚板に横になり、外を眺めている。ときどき「カッカッカッ」と鳴いては、無駄なのに鳥たちに一方的に話しかけているようだ。
先日、洗濯物を干していると猫が鳴きだしたので、見るとそう遠くもない電線にカラスがいた。おお!と思った。すると、突然「カアアー」と鳴きはじめた。そして、それにつられて遠くから幾羽もの仲間の声がした。なんとなく何かを伝え合っている感じがした。
しばらくして「バサバサッ」と羽音がしてカラスが飛び立ち、私も猫も同時に空を見上げた。「行っちゃったね」と暢気に笑って猫に話しかけていたら、ややあって頭上からひときわ大きく「カアアア~」と声がした。どうやらうちの屋根のどこかにいるらしい。
瞬間、すべてがわかった。狙われている。怖くなって、ケージから猫をすぐさま出した。おそらくカラスは猫が逃げられない檻に入れられているのを知って、仲間と共謀して襲おうとしたのではないか。最初の「カアアー」は「あんなところに猫がいるぜ。いっちょ、みんなでからかってやろうぜ」だったに違いない。うちの屋根にとまって「ここだよ、ここにいるぜ」と知らせたのだ。ったく、今書いていても、屋根で羽を広げて踊ってみせるカラスの姿が想像できて頭にくる。悔しい。うちの猫は邪心のかけらもなく、ただただフレンドリーなだけだったのになんという悪意か。
それ以来、カラスどもには用心している。飼い主の心知らずで今朝もカラスに「カッカッカッ」とフレンドリー光線を送っている我が猫を情けない、と思う。間抜けとはこのことだ。
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by zuzumiya | 2016-08-13 11:16 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)

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