長田弘の詩を読むことは

a0158124_10493737.jpg長田弘の詩を読む。このことはわたしにとって特別なこと。
最初のページの何もないほの白さ。
詩を読むために、ここで静かに深呼吸をする。
こころを落ち着かせる、しんとさせる。
こころを耳にして、目を耳にする。
この穏やかなる作業、これこそわたしは、詩を読むことの本質だと思う。
次のページを開く。
活字がある。ことばがある。
もどかしさ、心細さのなかにもそっと耳を傾ける。
語りかけることばに、その一行一行に、慈愛でもって寄り添う。
こころを静かに透明に、やわらかにする。
ことばに対して、これほど深い懐かしさを感じることはない。
長田弘の詩を読むことは、そういうことだ。


草が語ったこと

空の青が深くなった。
木立の緑の影が濃くなった。
日差しがいちめんにひろがって、
空気がいちだんと透明になった。
どこまでも季節を充たしているのは、
草の色、草のかがやきだ。
風が走ってきて、走り去っていった。
時刻は音もなく移っていった。
日の色が、黄に、黄緑に、
黄橙に、金色に変わっていった。
ひとが一日と呼んでいるのは、
ただそれきりの時間である。
ただそれきりの一日を、
いつから、ひとは、慌しく
過ごすしかできなくなったのか?
タンポポが囁いた。ひとは、
何もしないでいることができない。
キンポウゲは嘆いた。ひとは、
何も壊さずにいることができない。
草は嘘をつかない。うつくしいとは、
ひとだけがそこにいない風景のことだ。
タビラコが呟いた。ひとは未だ、
この世界を讃える方法を知らない。

                        
                        (『人はかつて樹だった』より)
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by zuzumiya | 2010-01-27 10:51 | わたしのお気に入り | Trackback | Comments(0)
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