冬の定番、雪の絵本。

雪の絵本をいろいろと探してみました。
始まり方は大きく分けて二通りあって、雪がいままさに降っているパターンと、昨日の夜に降って朝目覚めたら銀世界のパターンとがあります。
前者は家にいて雪に降り込められている静の世界、後者は積もった雪景色のなかに飛び出していく動の世界。そして、共通して雪の絵本のなかには、雪がある外とストーブのある暖かな家という対比が上手に描かれていて、それはそのまま外では冒険活動、内ではお母さんがいてくれる安心休息につながり、どの季節の絵本に比べても、よりじぶんの家やお母さんの暖かさ、やさしさというものに「守られている」ことを自然と実感できるようになっています。

a0158124_18303885.jpg静の世界の代表選手は、『ゆきがやんだら』(酒井駒子/作)です。
彼女の作品はすでに欧米やアジアの国々で翻訳出版されています。新聞や雑誌など多くのメディアで取り上げられ、賞賛されてきました。他の作品ですが、すでにフランスやオランダでは賞も獲っており、先日は今作でアメリカのニューヨークタイムズ紙が選んだ「今年の絵本ベスト10」にも選ばれました。絵本ばかりでなく、書籍や雑誌の装画や挿画、映画や芝居のフライヤー、現在は朝日新聞の「七夜物語」の挿画を担当するなど、活躍の場は幅広く、彼女の絵の人気のほどがわかります。今、わたしの最も好きな作家さんのひとりです。
物語はささやか。雪が降って幼稚園に行けなくなった「ぼく」と買い物をやめにしたママの、しんしんと雪に降り込められた静かな一日のお話です。

雪の絵本のなかにはわたしが個人的に「どうしてもこれがなくっちゃ」という外せない場面があります。それは、必ず「見開き」で、「主人公が雪景色を眺めている姿」です。
主人公の姿は遠景で小さければ小さいほど味が出るというか、大きな雪景色のなかにすっぽり包まれるように、ぽつんとただ佇んでいてほしいのです。大好きな、いまだかつてこれを越した絵本を見つけたことがないという、わたしにとって最高の冬の絵本『たのしいふゆごもり』にも見開きで、降りつもる雪を親子の熊がただ静かに見つめている場面があってくれます。

このしんしんと音もなく、雪に白く白く降り込められている静寂の感覚こそ、雪の絵本の醍醐味だと思っています。単に絵柄として美しいとか雪の絵本らしいとか、そんなものではなくて、問題はその静寂の意味をどれだけ繊細に、どれだけ大切にその作家さんが思っているか、にあります。わたしは、絵本は実はとても立体的なものだと思っていて、匂いや音や温度、そういった視覚だけではない感覚も刺激されて立ち上がってくるのが絵本の世界なのだと思います。『ゆきがやんだら』の見開きの雪景色には聴覚だけでなく、目に見えない体内時計の「静まり」までもが感じるのです。雪や雨というのは、本来、地上の人間たちにこの「静まり」の感覚を呼び起こさせるための機会なのではないでしょうか。世界を見つめることで、自然を見つめることで、おのずと静まりゆく内を身体に持っていること、そのささやかなしあわせを作家さん自身が実感として持っていないとこういう場面は描けません。

物語のなかにとてもささいなところですが好きな場面があります。酒井さんの芸の細かさとでもいいましょうか、愛情深くて繊細さがよく出ています。「ぼく」に風邪を引くから雪がやむまで外へ出てはいけないときつく言っていたママですが、パパが雪で飛行機が飛べなくなり帰れないと受けた電話の後に、心配そうな遠い目をして腕を組みながら、ぼんやりベランダへ出てしまうのです。ここではふっと微笑んでしまいました。有名な「ぼくとママしかいないみたい、せかいで……」は多くのファンが口々に素敵と誉めるところですが、パパが帰れないという流れのあとに出てこそ、生きてくる深みがあります。
                                    

a0158124_18311938.jpg動の世界の代表選手としては『ゆきがふったら』(レベッカ・ボンド/作)です。
大きめのサイズで、表紙の絵も雪山に立つにぎやかで色鮮やかな子どもたちの姿です。ページをめくってみると、動の選手の名にふさわしく、紙面いっぱいに大胆なうねるような動きのある絵で、深々と積もった雪を描いています。この躍動感あふれる絵がこれから起こる楽しいことを予感させるのです。

ひと晩じゅう降った雪。さあ、町には除雪車の出番です。雪を押して固めて山にして、どんどん積み上げていきます。子どもたちは除雪車の音を聞くともう大騒ぎ。あわてて支度を始めます。除雪車は子どもたちみんなのヒーローなのです。なにせ大きな雪山をただでプレゼントしてくれるのですから。巨大な雪山を前に、集まった子どもたちは考えます。
「このゆきのやまをどうしよう? なにをつくればいいのかな?」
この楽しいことを考えるということが、どれほどわくわくしてしあわせなことか、そのひとときを絵本はわたしたちにも分け与えてくれるのです。

何ページにもわたって子どもたちの懸命な分担作業が続きます。そんなにぎやかな作業のなかにも、作者はふっと詩的な表現を差し入れてきます。
「スコップでしろいゆきをすくって、
 レモンいろのゆきをすくって、
 みずいろのゆきもすくう。」
日向だったり、日陰だったり、当たった光の加減で変わる雪の色をていねいに表現してみせるのです。たいへんな作業はみんなで協力し、模様をつけたり、飾ったりする細やかな作業はひとりずつ真剣にやっています。それぞれがそれぞれの持ち味とアイデアで気持ちをひとつに動きます。そして、巨大な雪山はどんなふうになったでしょうか。できあがったときの子どもたちの、光をあびてのけぞるその晴れ晴れとした輝かしい笑顔! 
わたしはこの絵本のなかでこの絵がいちばん好きです。そして、みんなでつくった雪山の遊び場の素晴らしさ!

最初にわたしが書いたように、動の世界を描いた絵本は徹底的に雪と遊びます。
子どもたちにとっては砂浜の砂と同様、空から降ってくる雪は自然の最高のプレゼントです。掴んでも痛くないし、ふわふわ軽いし、変形自在、もとは水だから口にも入れちゃう。でも、暖かくなれば溶けて消えてしまう儚さもある。自然は口はきけないけれど、なんてうまくできているんでしょう。

最高な素材を貰って、徹底的に遊んだ後は、暖かい部屋と夕ごはんが待っています。
動の世界の絵本は特にその対比がしっかりとして、家のなかが至福の場所のように描けているのです。そしてそこに読者もほっとひと息つけるのでしょう。冒険と休息と。単純なことのようですが、車の両輪のようなこのふたつのバランスを、大人のわたしたちはないがしろにしてしまいます。
「くらくなったら、おうちにかえって、あったかいごはんをにぎやかにたべて、すきとおったよるをしずかにながめる。」
この単純さ、この幸福。ここへ、この暮らしの原点へ戻りたいといつでも強く思います。
ああ、また雪が降らないかなあと、子どものようにぽかんと口をあけて空を見つめてしまいます。実際の雪が見られるまで、絵本のなかの雪の世界をどうぞたっぷり楽しんでみて下さい。
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by zuzumiya | 2010-01-04 18:32 | わたしのお気に入り | Trackback | Comments(0)
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