ペットショップの恐るべきおばちゃん
昨日、ジョイフル本田に行った。私は猫の方へ夫は金魚の方へと別れたのだが、用事が済んで夫の元へ行くと、夫は爬虫類のケージをじいっと見上げていた。
「どしたの?」
「あれ、見てみろよ、さっきからずっとぶら下ってるんだけど、どうにもよじ登れないみたいなんだよ」
見るとカメレオンがケージの天井の細かな網に両手の爪を取られて、体全体がぶらりと宙にぶら下がっている。引っかかった爪だけで懸垂のように全体重を支えているのだ。どうやったらあんな高いところに飛び移れるのか、はるか下に遊び木の枝がある。
「落ちることもできないし、さっきから何度か足を上げてるんだけど届かない」
夫が言うそばから、カメレオンはぷっくりした腹を折り曲げて力の限り腹筋を使って両足を上げた。二又に分かれた手のような足は可愛らしく申し訳程度にほんのちょっと上がっただけで、とても天井には届かない。すぐに力尽きて、またぶら〜んと体を伸ばしてしまった。
「大丈夫かぁ? あれ、ヤバいっしょ、どうみても」
「ああやって、何度も試しちゃ、休んでるんだよ、さっきから」
ケージを見上げながら喋っている私たちの脇を小さな男の子とその父親が「あんなことやってるよ」と笑いながら通って行った。
「あれ、店員さんに言わないとぜったい体弱って死んじゃうよ」
私は近くにいる店員を呼びに行った。ペットショップに似合わない茶髪にピンクの口紅の厚化粧のパートと思しきおばちゃんだった。事情を説明して、おばちゃんがてっきり男の飼育員を連れて来るものと待っていると、なんとその茶髪のおばちゃんが赤いゴム手袋をはめてこっちに来るではないか。「まさか、おばちゃん自ら?」と思って見ていると、さっさと踏み台に乗ってケージを開けると、天井からカメレオンを引っぺがして
「もう、何してんでちゅか、こんなとこ登ったらダメでちょ。下りられないでちょ」
掌のカメレオンに向かって厚いピンクの唇をすぼめて赤ちゃん言葉で話かけている。ゲゲッ。私も夫も度肝を抜いた。おばちゃん、ただのパートじゃなかったの?
帰りの車ではカメレオンの不思議よりニンゲンの不思議の方で盛り上がったのは言うまでもない。
by zuzumiya
| 2017-11-05 13:55
| 日々のいろいろ
|
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