暮らしのまなざし

蠟梅

先日、と言っても正月の二日の話だが、頂いた年賀状の返事を出しにポストを探し歩いていた時のこと。近所のアパートの駐車場の片隅に蠟梅が咲いているのを見つけた。いつもならその清楚な香りで目よりも鼻でその存在がわかるのに、鼻も正月ボケなのか、わりと近くに咲いているのに全然気づかなかった。蠟梅は金木犀と並んで香りがいいので以前から庭が持てたら植えたいと思っていた。こんなにいい香りの、私にしたらお金を出して買いたいくらいの蠟梅がなんで駐車場の片隅なんかで人々に忘れ去られ、排気ガスにまみれていなきゃならないのか。まったく物の価値がわからない奴が多すぎる。なんて内心息巻いて、花びらの香りをスンスン嗅いでいた。駐車場だし、誰からも愛情を注がれていないみたいだし、手折れるものなら手折って行きたい。が枝なので手では無理である。そういえば、最近、花を摘む人、手折る人を見かけたことがない。昔のように空き地や原っぱ、線路際のような宙ぶらりんの場所がなくなって、みんなしっかり誰かの所有地だから、勝手に入ったり、手を伸ばして季節の花をちょっとだけ手折ることもできないのかな。夜陰に紛れてノコギリでギコギコやるのはどこから見ても花泥棒である。で、どうしても欲しくなって矢も盾もたまらず、三連休の最後の日に蠟梅の鉢植えを買った。鉢植えの方は触れたらポロリと取れちゃいそうな小さな丸い蕾ばかりで花は一つも咲いていない。本当に咲くのかなとやや不安である。
ところが今日になって、道端の自家製野菜を売ってる小屋にバケツが置いてあって、その中に蠟梅の枝が挿してあるのを見つけた。二本で百円。いくつも花が咲いていて、いい香りで蕾も多い。他の奥さんたちは袋づめのミカンや柚子に手を伸ばしていたが、私だけが見向きもせずにしゃがんで蠟梅の品定めに励んでいた。後から来たお婆さんがそんな私の姿を見てぽつりと「春だねぇ」。いやいやお婆ちゃん、季節はまだ寒中ですぜ。これからいちばん寒い大寒を迎えるんでしょうが。でも、いい香りの黄色い小花はたしかに春を思わせる。春告鳥はウグイスで、春告花は梅の異名だけど、寒のさなかに咲く蠟梅こそ春告げの名にふさわしいと私は思う。

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by zuzumiya | 2017-01-11 23:59 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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