人類はみなナチスか

年末に庭の木にバードフィーダーを2タイプ吊り下げた。ひとつは傘を裏返したような形で細かく刻んだリンゴやみかんを置いて枝に引っ掛けている。もうひとつはワイヤーの筒に餌の団子(小麦粉やひまわりの種などをラードで固めて団子状にしたもの・既製品)を入れて吊るしてある。
最初は傘の方にヒヨドリがきて、果物ばかりをガツガツ食べて一羽で全部平らげていった。やがて、ヒヨドリのいない時を見計らうように山茶花の間からメジロが顔を出し、控えめに啄んでいった。ヒヨドリもメジロも味をしめると毎日庭に来るようになった。ただ、どういうわけか果物ばかりをつついて飛び去り、すぐそばに吊るしてある栄養満点の餌団子の方に全く気づく様子がなかった。息子いわく「ワイヤーの方は罠に見えるのかもよ」なるほど。5日目ぐらいにとうとうしびれをきらして、餌団子を割って果物と一緒に傘の上に置いてみた。それでダメなら潔く団子は捨ててしまおうと思っていた。そしたら翌日、黒帽子に黒ネクタイが目印のシジュウカラがつがいでやってきた。シジュウカラはワイヤーに器用に捕まって盛んに団子をつついている。よほど空腹だったのか餌団子が旨いのか、長い時間逆さにぶら下がって頭に血が上るのではと心配になるほどの食欲である。やがて、つがいが吹聴したのか、3羽4羽と仲間を連れてきた。貪欲で図々しいその食べっぷりに、ついにはメジロまでつがいで来て、俄然、庭木は賑やかになった。「ほらね、旨いだろう?」内心ほくそ笑む私。ようやく報われた思いがした。人間でも猫でも鳥でも魚でも、生き物ががっついて食べる様子をそばで見守るのは楽しい。心が潤んでくる。
我が家の猫はちょうど庭木が見える出窓のクッションに寝転がるのだが、チビの方は微動だにせず見事にバードウォッチングを楽しむことができるが、やんちゃなももの方は鳥が来るたびにじっとしていられず、窓に飛びかかるのでパッと逃げられてしまう。それでもシジュウカラは願ってもない豊富な餌場から遠く離れようとせず、猫の隙をついてちゃんと舞い戻ってくる。そのあたり、飼い猫よりはるかに生きるための肝が座っている。
私が小鳥たちのためにリンゴを細かく刻んでいると、夫が言った。
「いいよな、人間に気に入られる生き物は。かいがいしく餌なんか用意してもらっちゃってさ。ゴキブリなんか、ちょっと出てきてフラフラ歩いてただけなのに、いきなりスリッパで叩き殺されるんだぜ。巣まで持ち返って根こそぎ全滅とか、考えてみりゃ、恐ろしいことするよなぁ、人間って」
思わず吹き出し、「そうだよねぇ。人類って他の生き物に対してはまるでナチスだよね」と私。
たしかに我が家の庭木に小鳥を狙ってカラスが来たりしたら、確実に追い払うだろう。夫は団地に住んでいた時、鳩の糞害で巣を作ろうとするつがいの鳩と戦い、撃退させた経歴を持つ。小型の鳥の集まる最近では大型で大喰らいのヒヨドリがなんだかもう可愛げがない気がする。鷹揚に餌なんかやりつつも、実は同じ鳥類に無意識に好き嫌いの選別を行っている。力を持つって、選べるってことなのよねぇ。夫の始めたゴキブリ話からナチスなんかが飛び出て、いつのまにかシュンとしてしまった。変な夫婦である。
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by zuzumiya | 2017-01-08 08:59 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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