ポテトサラダに降ってきた

たったひとりで、

音楽もかけ忘れた静かな部屋で、

ひたすら夕飯のポテトサラダの蒸したじゃがいもを、

木べらで細かくつぶしている。

なめらかになるように、

マヨネーズとよく混ざるように、

まんべんなくまんべんなく、

ひたすらつぶしてならしてる。

まだ誰も帰ってくるなよ、

ピンポン鳴るなよ、

ほら、はやくはやく、

あとこの一品でぜんぶ仕上がるんだから、

絶対間に合えよ、

帰ってくるなよ、

ドア開けるなよ、

味をなじませろ、

おいしくなれ、

ほらそこ、もっとつぶせ、

ボウルを押さえろ、しっかりと。

そんなとき、はっと気づく。

愛ってものが実はこんなものだったかと。

いきなり天から降ってきて、

またしてもこんな場面で、唐突に、わかってしまうなんて。

可笑しくなってくる。

家族のために、

おいしいと言ってもらうために、

いや、ただ笑ってもらうために、

「食べなよ、もっと」と言わなくてもがっついているのを、

そばで見ているそのために、

いや、そんな理由はいま考えてるからにすぎなくて、

ただもうひたすらに、ただただ夢中で、

おいしくなるように、間に合うようにで。

こんなことに、

こんなふうに、

こんなにも懸命になってるそのことが、

あの大それた、謎めいた、哲学めいた、愛だなんて。

もしかしたら、私はもうすぐ死ぬのか?なんて、

ふと手を止めて思ったりする。

神様や過去の名だたる賢人たちには申し訳なさすぎて、大きな声では言えません。

だって、ポテトサラダですよ。

あんまりにもカッコつかなくて、

ギャップがありすぎて、

それでも、愛ってそういういうもんですよね。

可笑しくてしょうがない夜。



※これもまた過去のブログの「家族の時間」のシリーズから見つけてきたもの。最近は自分が書いた過去の文章を読み返したくなっている。年だな。たしか「深夜の茹で玉子」とかいうタイトルで祖母の話を書いた記憶があるのだが、バックアップのディスクに見当たらず、もう一度書いてみようかと思っている。




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by zuzumiya | 2016-12-14 21:44 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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