暮らしのまなざし

サラリーマンが怖い

朝、園までの道を自転車に乗っていると駅へと急ぐサラリーマンの自転車に追い越された。ベルも鳴らさず脇からスッと入ってきて、私の先をぐんぐんこいでいく30代らしき四角いリュックを背負った尻の張った後ろ姿を見ると「サラリーマンってなんだか怖い」と思う。
彼にもきっと妻と幼子がいる家庭があって、つい今しがた玄関で笑って「行ってきます」「行ってらっしゃい」とやってきたのであろうが、玄関を出て門扉を閉めたとたん、サッと笑顔が消えて、家庭のよきパパ、よき夫からサラリーマンという戦闘人種に変わってしまうような気がする。厳密に言うと、人種というよりなんだか体温も感情もないアンドロイドに近い。後ろに背負ってる四角いリュックはそのまま彼を動かすコンピューターに見える。この感じはうまく説明できないが、駅でも電車の中でも、歩いていても並んでいても居眠りしていても、ひとたび家を出ればサラリーマンの表情に家庭という“愛の面影”がないのが、そういうふうにできてしまえるのが、人間らしからぬ感じがして気味悪いのである。出がけに妻子に向けた優しさと見知らぬオバサンの脇をスッとすり抜け駅へと急ぐ強引な冷淡さがほんの少しの時間差で出る。情愛というものはもっと引きずって、ふんわり包まれていてもいいはずなのに、門扉を出てサラリーマンになったとたん、戦闘モードにチェンジして世間はみな戦わねばならぬ敵になって、私ごときのオバサンも虫けらのように冷たくあしらわれてしまうのだ。戦うために歩き、追い越し、先に並び、満員電車で押し返し、ドアが開けば我先に出て行く。すべては金を稼ぎ、自分の家族を養い守るためなのだが、その根底の優しさや愛や人間的なあたたかみが背広の武装からは一切表に出てこない。よくアイドルがみんな同じ顔に見えるというが、サラリーマンがワンサカ新宿駅の階段を下りていく映像やら横断歩道を交差していく映像を見るたびに、誰も彼もが同じに見える。人間味がないというか、個がないというか、やっぱり戦士というにふさわしいアンドロイドなんだよなぁ、と思う。
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by zuzumiya | 2016-09-16 22:02 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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