暮らしのまなざし

穴を掘る私

暮らしの中でささやかでも心打つ美しいもの、素敵な事柄を拾い集めたいと清らかな心掛けで始めたブログであった。だが、どうだ。年をとるごとに心掛けとは正反対の愚痴や悪口ばかりを書いている。もともと面と向かって他人にバンっと意見を言えない弱気な人間である。昔、編集者に「自己評価が低すぎますね」と冷たく言われたこともある。ほんとうだ。ずっとふらふら生きてきたから、他人に何かを言えるほど自分に自信がないのである。でも、腹の中ではいろいろと考えに考えているのだ。最初は“王様の耳はロバの耳”の話のように、地面に穴を掘ってその中に私は喋っているつもりだった。でも、ひょんなことから暗い穴は水道管のように四方八方に繋がっていることがわかってびっくりした。ネットは穴ではなかったのだ。当たり前だが。でもきっと、今だに多くの人がネットは自分一人が掘った何処にも通じていない暗い穴だと思っている。じゃなきゃ、あんなにいろいろブチまけない。私は言うべき人に言うべきことを言うべき時にきちんと言えないから、仕方がないから穴に吐いてきた。きれいな心掛けでいなきゃと思いつつ、体面や見栄ばかりじゃなくそういうエッセイや文章がほんとに好きなんだよと思いつつ、弱さに負けて全く反対の素敵じゃないことを書いてきた。でも、どこかでこれが人間的なんだよと知りながら。
で、前置き(言い訳)が長すぎた。わけがわからなくなる前に書いておこう。うちの斜向かいの家のオヤジが毎朝、5時頃にシャワーを浴びる。朝早いのはまあ、いいだろう。私も早い。嫌なのは必ず大きな咳をして必ずガラガラと痰をからませるのである。それも何回もだ。腹の底から、いや肺の底から、いや気管の壁のヘリから身体全体を震わせて粘りつく痰を「ガラガラぺッ」と剥ぎ取り吐き出している感じで、私はそのやけくそとも思える力強い咳が大嫌いなのである。なぜだかその度に「ああ、今出たな」と吐き出された痰のことが浮かんでしまう。水に流しているのか、ティッシュに取っているのかまで考えてしまう。気持ちが悪い。そして、奥さんや家族のことを思いやる。ああいう男の、ちょっと野卑な、ああいう咳にいつものことと慣れてしまっているのだろうか、と。私は絶対、慣れないな、と。たぶん、うちの風鈴がうるさいと言ってきたのはあの家である。たしかに大風の日に風鈴をぶら下げっぱなしにしていたのは悪かった。だが、あんたの家の亭主の咳も耳障りなもんだよと言ってやりたいが、言えないので今日も穴を掘ったしだいである。私は何処へ向かうのだろうか。









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by zuzumiya | 2016-08-14 09:35 | ちっちゃい器で生きていく | Trackback | Comments(0)
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