暮らしのまなざし

梅干しの種だったりカレーの匂いだったり

考えたら6年も前だった。バイトで一緒だった物知りのお姉さまに脚本家、木皿泉さんのことを教えて頂いた時、あの頃はそんなに心に響かなかった。人から「いいよ」と勧められるものに「そうやすやすと乗るのも癪だな」という天邪鬼はこうやって遠回りをして時間をロスするが、それでも人生においては損をしないようだ。
ドラマ『すいか』あっての『かもめ食堂』だったり、その後の一連のまったり系の小林聡美&もたいまさこ&市川実日子作品というか、フードスタイリスト飯島奈美作品というか、そういうムーブメントを生むきっかけになったんだから、やっぱり『すいか』の威力、貢献度はすごいんだろう。
木皿さんの脚本でいちばん好きだと思ったところ。
三億円横領の馬場ちゃんが下宿ハピネス三茶の台所に忍び込んだ時、朝食の茶碗の中に残った梅干しの種を見つけて、何気ない日常の暮らしの尊さにしみじみする話があった。しゃぶり終えた梅干しの種という視点は素晴らしかった。と同時に『寺内貫太郎一家』のドラマのなかで食を大事にした向田邦子さんのことを今更ながら偉大だったと思い出した。昨日の夜のカレーの残りを翌朝にご飯にかけるささやかなシアワセをドラマのなかに登場させたのは向田さんだったけど、木皿さんも『すいか』の初回で夕方に何処からともなく流れてくるカレーの匂いに触れている。カレーの匂いって、なんなんだろうね、やたら郷愁をそそる。夕方、自転車に乗っていてカレーの匂いがすると「ここん家、今夜カレーなんだ」と思うと、なんだかすこぶるホッとする。「帰ってきた感」がする。幸福感がせり上がってくる。煮物の匂いとか焼き魚とかよりグッとくる。不思議だな、インド人でもないのに。
そういうささやかで、でもいじましくて微笑ましくて愛おしい人の暮らしの機微を思い出させてくれるドラマって、やっぱりすごいな、ありがたいなと思う。毎日の暮らしを大事にしたくなる。マジに天国の向田さんに「しゃぶり終えた梅干しの種なんですよ!」と教えたい。
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by zuzumiya | 2016-05-15 07:29 | わたしのお気に入り | Trackback | Comments(0)
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