暮らしのまなざし

モッコウバラ、おそるべし

a0158124_1013632.jpg春は白い花から始まる。雪柳、こでまり、木蓮。梅や桃や桜が風景に赤みを添えて、それからまばゆい黄色がやってくる。レンギョウ、山吹、ミモザ。そして、モッコウバラ。花屋に行くと様々な色の鉢花の中からちょこんと黄色い小花を揺らしてモッコウバラが顔を出している。「可愛いなぁ、この黄色」なんて言いながらひょいとカゴにいれる客も多いだろう。その気持ちはわかる。花のことをよく知らなければ可愛らしい外見で買うのは当たり前だ。
自転車で住宅街を走る。垣根に一輪のモッコウバラを見つける。目が合うという感じだ。「ああ、お気の毒」とため息が出る。「ここの家の人は知っているのだろうか」と心配する。「いやいや、知っていて楽しみにしているのかもしれない」と考え直す。
でも…。私は知っている。モッコウバラに占拠されるがままにやられたダメダメな家を。モッコウバラの繁殖力は、想像以上にすごい。垣根に這わせて「きれいねぇ」なんて言っているうちはその恐ろしさに気づかない。通りすがる人々も「きれいに咲いたな」「上手に這わせているわね」と感心して見ている。だが、そのうちその「きれい」が「おっと、すごいね」になって、「うおー」になって「ちょっとやりすぎじゃない?」になって、ついには「ねえねえ、このお宅、どこから入るの?」になっていく。とにかく物に覆いかぶさって、物を飲み込んでいくような勢いで咲いていくのがモッコウバラなのだ。
住宅の垣根から前にある公共のポストに伸びていき、赤いポストが黄色いポストに変わってしまったのを見たことがある。住宅の横壁一面をじわじわと黄色く塗り替えてしまったのを見たことがある。庭から門柱へ伸び、表札を隠してしまった家を見たことがある。二階のベランダから下まで覆い尽くされ、玄関を隠してしまった家を見たことがある。からみつけるものはすべてからんで覆い尽くし、黄色い花と緑の葉のジャングルにしてしまう。残念ながら上手に美しい見栄えで、すなわち適度の範囲で、モッコウバラを育てている家を見たことがない。みんないいように繁茂され、支配されていく。
子供でもペットでもそうだが、太らせてしまうのは育てる側に問題がある。植物も同じで、どうしても育てる側は育つことに喜んでしまい、いい気になって肥料をやり、なすがままにそれこそ自然に任せてどんどん育てと願ってしまうものかもしれないが、過ぎたるは及ばざるがごとし。傍から見たら、子供もペットも植物も可愛いとか素敵とか正直思えない。この時期、住宅街でチラホラと見かけるモッコウバラ。「可愛い顔で人を騙し庭に入り込み、やりたい放題に伸びていき、侵略の野望を遂げていくいけすかないヤツ」と私だけはそう思って見ている。
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by zuzumiya | 2016-04-15 10:13 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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