他人の庭

考えてみれば、去年の梅雨時に此処へ引っ越してきた時はすでに花は終わっていたんだろう。
夏が終わり秋になって部屋の中も落ち着いた頃、急に庭に目が行って、ひょろひょろと伸びていた木の枝が煩わしく、しかも、枝に薔薇のような棘があるのも嫌らしく、ホームセンターで買ってきた植木ばさみで無闇矢鱈に切っていった。馬鹿にはさみは持たせるなと言うが、大きなはさみで切ること自体が子どものように楽しくて、何でもいいから切らずにおられないといった昂ぶりだった。マンション暮しが長かったし、もともと庭木のような植物に詳しくないのでよく考えることもなく、目障りなだけで切ってしまった。
他人の作った庭である。庭の真ん中に陣どった育ちすぎた紫陽花が邪魔だと土を掘れば、周辺の土からウコンか生姜にウジャウジャ根が生えたような宇宙生物のような形の球根がゴロゴロ出てきた。気持ちが悪いとそれらも全部掘り起こして捨ててしまった。紫陽花は根が深く四方八方に頑丈に伸びていて、人間の方が根負けしてしまい、そこまでして此処にいたいのならとそのままにした。冬になり、食堂の出窓の前に植わっている木が赤い花をつけたので、見当どおり椿だと分かった。ただ、その脇に植わっている木が金木犀のような気がするが秋に花をつけなかったため、未だ何者なのかわからないでいる。そして分からないなら仕方ないので長年の夢の金木犀を自分で買ってきて植えた。春になった。秋の頃に落ち葉がひどいわ、枝に棘があるわ、ひょろひょろと枝が伸びててきれいじゃないわで無闇矢鱈に切ってしまったその枝に小さな白い花が咲いた。人間とは身勝手なもので、花が咲くと「なんだ、花が咲くんじゃん」と急に愛おしくなった。花が咲くなら切らずにいたものをと思った。庭をよく見ると、先日植えた雪柳の隣の隣に雪柳らしい枝ぶりの木が植わっている。まさかと思ったが数日後、白い細かな花が咲いているのを見た時にはがーんときた。そして今日、あの棘のある白い花の木の並びに植わっている、これもまた秋の頃には枯れ葉がすごくて面倒だとザクザク切られていた木が、小さな白い蕾をふくらませ始めているのを見て、なんともしかしたら小手毬ではないかと思った。この小手毬もホームセンターに行く度に買いたいなと思っていたものである。考えてみれば、この庭の前の持ち主は千両は植えているわ、椿に紫陽花に、もしかしたら金木犀、それから雪柳、小手毬と結構、風流人だったのではないかと焦る。
今となっては、あの掘り起こしてしまった宇宙生物みたいなウジャウジャ球根はどんな花を咲かせたのだろうかと思う。
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by zuzumiya | 2016-04-08 17:42 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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