暮らしのまなざし

手押しアイロン

仕事の話は書かないと決めたけど、憶えておきたいことをひとつだけ。
園は今時珍しい布おむつを使っている。肌触りがいいこと、濡れた感じが子供にすぐにわかって不快なことを保育士に知らせたり察知できたりして、保育士が何度でもそれを取り替えてあげることで愛着感、信頼感が増していくというのが狙いなのだろう。
自分の子供にも布おむつは使ったことがなく、研修時に私はたたみ方すらわからなかった。
直属の先輩に教えてもらって、トイレ前の廊下でおむつをたたんでいると、隣のクラスの年配の担任が子供をトイレに連れてきた際に、さっと座布団を差し出してくれた。
「自分のカラダは自分で守らなきゃ、この仕事やってられないわよ」
それだけ言って子供の用を済ませに行ったが、帰り際、私のたたむ手元を見ていたのだろう。
「あのね、おむつはね、こうやって…」と私のたたみかけの一枚を取ると、自分の膝に持って行き「おむつはね、こうやって、丁寧に手でアイロンをかけるみたいに伸ばしていくと意外とシワが取れるものなのよ。ね、こうやって、“手押しアイロン”するの。そうすれば、赤ちゃんも当てた時にゴワゴワしなくて気持ちがいいでしょ?」
私は恐縮して「はい」と返事した。でも、なぜだか、自分がたった今、たたみ方を注意されたのだという嫌な気持ちにはならなかった。
「教えていただきありがとうございます。まずはおむつをきちんとたためるところからですよね」と私は笑った。私の膝の上にぽんとシワが伸ばされたおむつが戻された。
彼女のたたんだきれいなおむつに手をそっと乗せると、ほのかに人の手の暖かさを感じた気がした。それからは「手押しアイロン、手押しアイロン…」と心のなかで唱えながら、その言葉の温もりに微笑みながら、励まされながら、膝の上でおむつを懸命に手で伸ばした。
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by zuzumiya | 2015-02-08 16:00 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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