暮れていく心地

夕方、前の高校のグランドから野球部の声が響く中、ベランダで洗濯物を取り込む。
まだアブラゼミがびいいいんとそこらで鳴いている。部屋の中からは静かなピアノの音。猫のももはベランダの檻の中。時折、ガラスの風鈴がこりんと鳴る。
今日は天気もよく、風がからりとしていたので秋らしいさっぱりとした陽気だった。
さっきまで夫がいた。田舎から届いた巨峰をおすそ分けにバイクで持って来てくれたのだ。
お茶をいれ、コーヒーをいれ、買っておいたお菓子を食べ、アイスクリームを食べ、夫が来るまで見ていた海のドキュメンタリーを何となくそのまま見ながら、ひとしきりおしゃべりした。
終いはいつもの話。子供が自立したがらないから、お金が貯まらないから、まだまだ一緒には暮らせないね…。
ベランダで夫の赤いジャンパーの背を見えなくなるまで見送った。
洗濯物はどれもこれもよく乾いていて、ほんのり柔軟剤のいい香りがする。
部屋に入って、山となった洗濯物をたたみだす。ももは「待ってました」と洗濯物の山に鼻先から分けいる。
ピアノが響く。野球部の野太い声。蝉の声。ゆるい風。風鈴の音。腿に置いたタオルの感触。Tシャツの柔らかさ。ふうわり香る洗濯物の匂い。もものなめらかな背中。
私もももも洗濯物をたたむこの夕方の時間がいちばん好きだ、と思う。外は明るくもなく、暗くもなく、でも、もう一日はたしかに終わりに傾いている。寂しいわけでも、もの哀しいわけでもなく、かといって満ち足りているわけでもない。なんとなくしんと落ち着いて、しみじみする心地。まさに“暮れていく”心地。
四隅を合わせて折ってたたんでいく、その繰り返しの手の作業がもたらす心の静けさ。人はそんなことに助けられている。
家に着いたら、夫も同じ気持ちで洗濯物をたたむのだろうか。
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by zuzumiya | 2014-09-09 18:18 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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