暮らしのまなざし

「淋しい」と言わせることで本当に何かが変わるのか?~映画『渇き。』を見て~

a0158124_1933477.jpg中島哲也監督の映画『渇き。』を夫婦で見てきた。
実にヘヴィーで、娘の過去を抱えている私たち夫婦には正直言って、キツかった。
原作は2005年でかなり前の作品だが、たぶん文庫化された時に読んではいたと思うが、あらゆるミステリーと同じに内容は忘れてしまっていた。
見終わってすぐに、ずるいなぁ、と思った。
表現者たちっていうのは、物事のいちばん衝撃的でキツイ部分を選んで、我々にぽーんと投げてくる。「ほら、考える材料をあげる」とでも言うように。
でもね、物事はこの社会の構造のなかで起こっていて、今という時代に起こっていて、複雑に絡まっていて、何が悪くて誰が悪くて、どうすべきだったか、どうしたらよかったのかなんて、簡単には答えはわからないものなのだ。辿っていけばどこかへ行き着くかでなく、いつまでもいつまでも悪者さがし、犠牲者さがしでぐるぐると悪循環の輪の中をただ回っているだけというのが本当だったりする。
家族のために一生懸命、誠実に仕事をして、家のこともできるだけ頑張って、なのに子供に「淋しかった」と言われてしまうやるせなさ。本当は誰が悪く、誰が犠牲者なんだろう。たしかに「淋しい」は人間の感情の中でいちばん厄介な感情だ。いい方にも悪い方にも転ぶ。でも、太古の昔から「淋しくない人間なんていないんだよ」と教えたいが、このネット社会が、消費社会がそれを妨げる。私は携帯やらネットやらが発明されて、つながることの親しさよりも、人々の淋しさをより顕にして深めていく方向へ進んでいったと思っている。「淋しい」ということにどんどん辛抱がきかなくなった。みんながそこら中で「淋しい。何とかしてくれ」と言い出して、おしくらまんじゅうのように互いの重みを押し付け合っている気がする。そして、どうにもならないことへの怒りが湧いてくる。
表現者たちも、だから簡単にセリフで「淋しかったんだって」なんて言わせないでほしい。
そこへすべてが集結してしまうようにはしないでほしい。世の母親にとって、それを持ち出されたら、もうどうしようもないのだ。じゃあ、「淋しかったんだって」を言わせることで何かこれからの解決方法にでもなるというのだろうか。
例えば、母親が仕事をやめて家庭にいればよかったか?衣服や遊び、友達とも満足に付き合えないほどの家計になったらどうなる?新たな淋しさがそれこそ生まれるんじゃないか?母親の仕事を捨てた淋しさはどうなる?忙しい父親の淋しさは誰が癒す?
どこかでこの淋しい、淋しい言っている社会の悪循環の歯車を止めたいが、浸透しすぎてどうしたらいいのかもうわからない。とても無力に思えて、とても虚しい。今書けることはこんなことぐらいだ。
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by zuzumiya | 2014-07-07 19:39 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(5)
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Commented by みみ at 2014-07-07 23:21 x
ドラマ・映画・本。すべてにおいて。人生の一瞬だけを切り取って表現してて。ずるいと感じます。実際は…その後も長く続く人生があって。どれが正解かもわからなくて弱い自分と強い自分。本当の自分となりたい自分との葛藤の毎日。

ただ…ネット社会。私は普及しはじめて。失ったものもありますが。あったからこそ繋がって得た友との関係もあります。
淋しいを言っても誰も笑わない。そんな旧友に癒されています。私は今…とても淋しい。一人にしないで!それを満たしてくれるのは。悲しいかな夫ではなく。友人達…
Commented by zuzumiya at 2014-07-08 21:45
みみ様。こんばんは。コメント、ありがとうございます。「ずるい」という感覚をわかって頂けてうれしいです。ネット社会を批判したわけではないのですが、やはり物事にはいい面と悪い面が背中合わせになっているということです。私も結局、日記をつけることで満足するのでなく、こうやって世界発信のブログを書いているというのは、この画面の向こうに共感してくれる誰かが、いないかもしれないけど、いるかもしれないというあいまいな希望を捨てきれずに持っているから。どうせ書くなら、誰かに語りかけたいという意味では淋しがり屋です(笑)。長年連れ添った夫ではなく、友人たちがアドバイスくれたり、癒してくれる。そういう関係も羨ましいです。私も男友達に夫とのことを相談したら、こてんぱんにやられました。新鮮でしたよ(笑)。
Commented by zuzumiya at 2014-07-11 23:26
skunaさんと呼ばせていただきますが、上のコメントを下さった「みみさん」でしょうか。間違っていたら、すみません。訂正をお願いいたします。「救われた」なんて、そんな、大層なこと、私はしてませんよ。でも、このブログが始まってからずっと読んでくださっていたとのこと、とてもとてもうれしいです。直接のご連絡先を頂きましたが、誰かにいたずらされても困るので非公開の方がいいと思います。まずは安全のために削除させて頂きました。私だけにお話したい何かがあれば、非公開コメントでどうぞ。お気持ち、ほんとうに嬉しかったです。ありがとう。
Commented by みみ at 2014-07-12 16:58 x
申し訳ありません。
私ではないです。
友達たち…でしめたコメントより後にコメントしていませんので。
とりあえずご連絡です。
Commented by zuzumiya at 2014-07-12 22:58
みみさん、人違いでしたか、すみませんでした。わざわざ教えにきてくださり、ありがとうございます。skunaさん、削除の件、連絡先への心配だけで他意はありませんので、また遊びにきて下さい。

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