暮らしのまなざし

長倉和平は優柔不断か?~続・最後から二番目の恋にみる大人な潔さ~

a0158124_12541859.png続・最後から二番目の恋が来週ついに最終回を迎える。
中井貴一演じる妻に先立たれた52歳の公務員、きまじめと誠実を絵に描いたような長倉和平と小泉今日子演じる48歳独身テレビプロデューサー、元ヤンで姉御肌の吉野千明の喧嘩まじりのかけ合いと不器用でちょっともどかしい大人の恋の行方が楽しみなドラマだ。
続編の方がセリフのかけあいのヒートアップさが弱まった気がしていたが、主人公たちもそれなりに年を重ねていて、その分、会話の中に中年男女の生きていくおかしみや切なさがにじみ出ていて、しみじみと染みてくるセリフまわしになっている。
特に前回の第10話、前々回の第9話あたりは、中年女子なら(ここは敢えてオバサンとは言いたくない)思わず胸を掴まれ、しばし我が身を振り返って考え、ひとり反芻してしまうセリフが満載であったように思う。
そのセリフのどちらにも関係しているのが、長倉和平という男。
前回では優柔不断と皆にいじられていたが、実はぜんぜん優柔不断なんかじゃなく、むしろ、大事なところでは誤解のないよう、ズバッと直球で本音を言ってのける、結構手厳しい男であると私には思えた。特に「友だちになりたい」という長谷川京子演じる、バツイチの癒し系天然美女原田薫子に対しては、それが発揮されていて、見ているこちらが勝手に傷ついちゃったりする。

例えば、薫子と和平の会話(第9話)。
薫子「それでね、私、ちょっと確認したいことがあるんです、長倉さんの気持ち。私のこと、どう思います?長倉さんは優柔不断なので二択にします。好きか嫌いか、二つに分けるならどっちですか?」
和平「それでしたら、もちろん、好きです」
薫子「ありがとうございます。じゃあ、女としてはどうですか?恋愛対象として好きですか、嫌いですか?」
和平「あ、あの、原田さんのこと、あんまり知らないし…」
薫子「どっちですか?あるなしで言ったら、はい、どっち?」
和平「なし、です」

この後、「人としては好きだけど、恋愛とかそういうふうになりたいわけじゃない。よかった、一緒です、セフレになれますね」ととんでもない方向で喜ぶ薫子だが、内心ではほんとうに喜んでいたのだろうかと思う。恋愛対象として「なし」とはっきり目の前の男に言われてしまうのって、実は女としてはいくつになってもきつくないだろうか? 後で反芻してじわじわ落ち込みそうである。
二択じゃしょうがないとはいえ、こういうことを濁さないで、逃げないでビシッと言い切ってしまう長倉和平はほんとに生真面目というか、男としては不器用な奴なんだが、決して優柔不断ではないと思う。女の出す究極の二択は、男の人間性というか真面目さの尺度なんだな、と思ったりする。

同じく薫子と和平の会話(第10話)。
和平「友達から恋に発展することが多いともおっしゃってました。私はね、そうは思わないんです。本当に友情を抱いてる異性とは、その関係を大切にしたいから、なかなかそういうふうにはなれないんじゃないのかなと思ってるんですよね」
薫子「うーん、そういうもんなんでしょうか。私は長倉さんのことを好きになりそうだから言ってるんです」
和平「先のことは分かりません。でも 、もし、もし万が一あなたが私のことを好きになってくださったら、その時は、失礼な言い方ですけど、きちんと失恋していただきます。恋愛にならない友達。友達は、ずっと友達です」

この「きちんと失恋していただきます」には驚いた。たぶん、この回のメインのセリフ、いちばんおいしいセリフ(脚本家目線なら)なんだろうが、テレビを見ている中年女子は全員、ド肝を抜かれただろう。自分のことを好きになりそうだと告白している女に向かって、「こういう言い方をしちゃうのか、長倉和平という男は!」としばし固まったんじゃないか。
実はこの和平のセリフ。流れの中ではいい感じなのである。私はこの「失恋していただきます」を立たせたいがために敢えて一連の流れを書かなかったが、このセリフの前にあくまで“友人として”発するセリフがある。薫子に「大人はみんなさみしいから、何とか少しでも人生を楽しくしたいって、みんな必死にもがいてるですよ、私も含めて」とか「恋をすることをあきらめないでほしいって思うんです。少し時間はかかるかもしれないけど、あなたにはちゃんと人生を楽しんでもらいたい。そう思うんですよ、友人として」と優しいアドバイスがあったりする。そういう友人として薫子を思う前フリがあっての「きちんと失恋していただきます」ではあるのだが、それでも、それでもである。恋心を持った女を崖から突き落としてないだろうか、この言葉は。これが優柔不断といえるだろうか。和平、おそるべし。

ここで中年女子の我らが(勝手に我らにしているけど)考えておかなきゃいけないのは、男女の友情問題である。中年まで長きを生きてきて、どれだけの男女が友情を恋愛にさせずに友情のまま、知人レベルに落とさずに大事に育んで来られただろうか。よく言われる“男と女の間に友情は成立するか”という根源的な問題だが、仲良くなって、二人でいるのが俄然楽しい思えば自然の摂理で恋愛感情は芽生えてしまうものと私は思う。そして、一度芽生えた感情を恋愛だと本人たちが認識したとたん、関係はギクシャクしだす。大抵はそこで気持ちが抑えられなくなり、白黒つけたがって告白になる。今回の薫子も「好きになりそう」と言いながらももうたぶん、だいぶ好きになっていることの告白をしているものと私は解釈しているのだが、見事に撃沈させられた。和平の言葉はかなりキツイが、和平が恋愛感情はないこと、友情を純粋に育みたいこと(もともとは薫子がそれを望んでいた)をはっきりさせるには、これくらいの直球でガツンと行かなければ哀しい誤解が生じると判断したのだろう。そう、誠意という言葉があるが、まさに自分の気持ちを正直に伝えることが相手への誠意、二人の関係への誠意と和平は思っていそうである。
で、友情問題だが、友人関係を続けるか終わらせるか、いかようにでもできるのは撃沈させられた今後の薫子の方である。まさに薫子に全てはかかっている。「友達は、ずっと友達です」(これも受け取り方によってはかなりキツイ言葉なんだが)言ってくれた和平との間の距離感をどうとるか、である。ここで撃沈させられたことを意識しずぎて距離をとりすぎると友人から知人へ、すとんとレベルダウンしてしまう。「恋愛が冷めると友人ですらいられなくなる」そういうもったいない失敗パターンを我々中年女子は人生で何度経験してきたことか。若ければ先の人生は長い。まだたくさんの出会いが待っている。(ほんとはさほどでもないんだが)少なくとも希望を持ってそう思える。でも、中年ともなれば先は短いし、出会いの貴重さは若い頃の比じゃない。
人生における喪失感や情けなさをわかって、なんとか受け入れてそれでも生きていかねばならない中年は、恋愛の激しく胸焦がれる熱さもそれが維持できず冷めていくやるせなさも知っている。茶飲み友だちという言葉もあるが、年をとるにつれ、人生のままならなさを笑って認め合い、友情というほどよい湯加減の親密さが男女ともにいいものだということ、人生に変わらぬ励ましと滋味を与えてくれるありがたいものだということをわかりはじめている。互いにどこか情けない、不格好な生き様の中年だからこそ、男女のせわしなく求め合う恋愛じゃなく、ゆっくり与え合う友情がようやく育めるものかもしれない。ようやくそういう何でも急がない(年齢的には急ぐんだが)、白黒つけなくても成り立つほどよい関係をゆっくり愉しめる年、いわゆる“大人”になれそうなのかと、なんだか思えた。すなわち、男と女の友情は中年になってようやく余裕を持って育めるもの、ってことだろうか(逆に燃え盛っちゃう人もいますが)。我が身を振り返って考えなきゃいけない大事なポイントを今回提示された気分だ。恋愛に行き止まりはあっても友情にはない。長く長く歩いていくことはできる。

さて、その白黒つけない関係だが、和平に恋心を抱いてる柴田理恵演じる市長のセリフにいいのがあった(第9話)。

市長「長倉さん、お気づきだと思いますが、私はあなたに恋をしています。だからといって別につき合ってくれと言ってるわけではありません。私は私なりに自分のことはよーくわかっているつもりです。つまり、その、女性としてのポテンシャル…。ですから、この恋が実る可能性があるとは思っておりません」
和平「いえ、そんな…」
市長「あるんですか、可能性は?」
和平「市長、あの、お気持ちは大変うれしいんですが…、申し訳ございません」
市長「断らないで下さい。恋愛はできなくても片想いする権利くらい、私にはあるはずです。片想いには二種類あるんです、長倉さん。一つは想いを告げて、その結果失恋に終わる片想い。もう一つは想いを告げず、あるいは結果を知らされず、永遠に続く片想い。後者の場合、ずっと夢を見ることができます。ですから、そうさせて下さい。人生、最後になるかもしれない片想い。結果のない片想いにさせて下さい。お願いします」
市長「というわけで、私はあなたに恋をしつづけます。ええ、長倉さん、あなたはそれを知ってはいるものの、答えを出さない、優柔不断な男でひとつ、よろしくお願いします」

この言葉のあと、乙女な市長はそっとすすり泣く。
中年女子はこの市長の懸命な心からの言葉にきゅんとしただろう。“女性としてのポテンシャル”。この言葉、私もあるのかないのか、ここ数日、ずいぶん反芻した(笑)。
実際、私と同じ年の友人にこの市長タイプがいる。
飲んで問いただしたら、結果を出さずに、自分の心のなかだけで大事にしておきたいから告白は絶対せず、今の仲良しの状態をキープするんだそうだ。この気持ちもよくわかる。友情の話でああは書いたが、実際のところ、多くの場合が告白をしてしまったためにギクシャクして自然消滅するというパターンは多い。第10話で薫子にあそこまで言い切った和平はそのままいつもと変わらない態度を貫くだろうが、彼女の方が意識しずぎておかしくなれば、和平ももう追いかけはしないのである。薫子があらためて、気を取り直して、友情維持に心を向けるしかないのだ。
私の友人の場合も、彼女の乙女度を考えてみても、おそらくは告白してしまったら自然消滅に追い込まれるだろう。友人のひとりとして笑ってそばに居る、その方が彼女にとっては幸せが長く続くことなのだ。市長の言うとおり、恋愛は成就できなくても片想いする権利、想い続ける権利は乙女だろうがプラトニックだろうが、誰にでもあるのである。今風に「いい年をして痛い」と片付けてしまうには惜しい、染み入る言葉である。
長倉和平、優柔不断と揶揄されていたが、なんのなんの、言うべきときにはきっちり言い、それゆえ、誠実さが時にちょっと酷にも思える男であり、そして、同じくこの市長も言うべきことはきちんと言って、何より自分に懸命に言い聞かす、二人のその線引きかげんの潔さが実に大人だなぁ、と思った。
次回が最終回だが、この優柔不断のオーラがあっても決して優柔不断じゃない長倉和平という男。本命、千明にどこまで潔く言えるのか。そして姉御肌の千明は(和平の前で泣いちゃったし、おんぶもされちゃったけど)そんな和平にどう潔く“大人”を見せてくれるのか、楽しみである。
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by zuzumiya | 2014-06-21 12:45 | わたしのお気に入り | Trackback | Comments(2)
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Commented by のの at 2014-06-24 17:01 x
はじめまして。
もう少しで子育てを終えるアラフォー主婦です。
中々楽しく読ませていただきました。

キチンと失恋して頂きます。
これって、すっごく優しい言葉だと思いました。何処かでちゃんと線引きをしなければ前に進めないから。和平さんって、優柔不断なんではなくて、話をするテンポというか言葉を選んで話すから話だしが遅くって優柔不断に見えるだけな気がします。
女…ポンポン言い過ぎなんですよね。

いよいよ最終回。どうなるんでしょうね。
楽しみです!
Commented by zuzumiya at 2014-06-25 10:27
はじめまして、のの様。コメントありがとうございます。
きちんと失恋の言葉、本当は優しいとはわかっています。でも、少しでも恋愛の気持ちがある相手にそうはっきり告げられるのは私だったら、凹んじゃうかな。ほんとにもっと言いようがないのかと(笑)。和平さんを知人レベルに落とさずに友人として薫子は関係を続けてほしいです。そういうドラマも見たいですね。子育てが終わると夫婦の関係を見直す時期になると思います。のの様もどうかお幸せに。また来て下さい。

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