ゆるぎないポイント

先週末、夫とふたりで上野の国立西洋美術館に行ってきた。
作家の平野啓一郎さんが「非日常からの呼び声」というテーマで選んだ絵画の展覧会とジャック・カロという西洋美術史を代表する17世紀の版画家の作品展。そのジャック・カロのエッチングなんだが、「なんでここまでやる?」と呆れるほどの緻密さで、会場には虫眼鏡の貸出があったし、画面を指で触れると虫眼鏡で拡大したように大きくなる仕組みのモニターもあって、ほんとにカロの仕事の徹底ぶりには文字通り瞠目した。特に当時の大博覧会のような人々が集まる広場の絵が多く、私は何度眼鏡を外して(老眼なので)「こまけー!」とつぶやいてまじまじ見たことか。
夫は遠近法で描かれた遠くの風景まで手を抜かず細かく線を描き込んだ絵を前にして、「このへん、グチャグチャってしたくならないのかな」とつぶやいた。細密画を前にして、この「グチャグチャってしたくなる感じ」が実によくわかって、私は吹き出し、もうそれだけで夫とここへ来てよかったと思えた。
そのうち、絵本の『ウォーリーを探せ』にならって、私と夫はモニターの前であらゆるところを拡大して「変な人探し」に興じた。ジャック・カロという人は当時の不具者や乞食をカリカチュアして描いていたブラックユーモアの人でもあるので、絶対にこの絵のどこかに一人ぐらいは「変な人」がこそっと居てもおかしくないと思ったのである。どんなに計算されて細密な絵の中にもそういうユーモアを入れ込んでくる遊び心のある人じゃないかと感じていた。そうしたら、いたのだ。たしか、ジプシーの絵だったか、木の幹の枝分かれしたところで尻をこちらに突き出してウンコしている男が。しかもそのウンコの形が漫画のようにねりねりと渦を巻いている!古今東西、同じ形に夫も私も吹き出した。
私と夫にかかれば、上品な美術館デートもこのありさまである。でも、久しぶりに思った。
男性との付き合いで何をいちばん重要視するか。食べ物の好みとか、趣味の一致とかいろいろあるだろうけど、私は間違いなく「笑うポイントが同じ」をあげる。
笑うポイントが同じな二人は、どんな時もどんな所でも笑いが吹き出る困った(?)二人である(葬式で笑い転げてしまった時にはさすがに参った)。が、楽しいのも事実である。

※「非日常」の方は、なんといっても平野さんが絵を選んだ理由を述べた文章が良かった。彼の言うようにその絵が見えてくるから不思議だ。ハンマースホイの絵がいちばん良かったという夫にひとまず安心。
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by zuzumiya | 2014-05-20 16:14 | 日々のことづけ | Trackback | Comments(0)
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