暮らしのまなざし

漏らして生きる

老人ホームで働いてみてわかったのだが、頻尿のおばあさんというのは実に介護士泣かせである。
「トイレ~」と叫ばれたものを知らんぷりもできないので、食事の配膳や介助の途中でもエプロンを外してトイレへと向かう。時にはほとほと困った顔をして「え、さっき5分前に行ったばかりじゃないの。ほんとに出るの?」とか「食事中だから、もう少し待てませんか?」なんて、ちょっと変化球を投げてはみるが、向こうはぜんぜん意に介さず、「はやくしないと、漏れちゃうよ」と催促する。でも、きっとそこまで頻尿だとトイレに座わらせてもチョロっとしか出ないんだろうな、なんて想像する。
こういう頻尿気味のおばあさんがフロアに何人かいると落ち着かない。しかもどういうわけか、食事の配膳などスタッフがわざわざエプロンに三角巾をつけてバタバタ動き回っているときに限って、非情にも言い出すのである。“出物腫れ物所嫌わず”とはいえ、介護士はその都度、ヨイコラショっと体を抱えてトイレに座らせるのだから、回数が増せばさすがにいい顔もしていられないだろう。
今私は48歳だが、なんとなく若い頃に比べてトイレが我慢できなくなった。と同時に尿もれパッドのCMも目につくようになった。出産経験のある女性はどうしても息むので尿もれがしやすくなるのだという。
私なんか4キロ超えの長男を帝王切開することなく普通に産んだので、近い将来、尿道がゆるゆるに弛みそうである。病気で子宮を摘出したため、月のものは既に30代からなく楽をしてきたが、またナプキンのようなものを今度は尿もれ対策で付けなきゃならない日が来るのかと思うとげんなりする。女はつらいよ。
でも、今の日本の紙おむつや生理ナプキンの品質は凄い。高分子ポリマーだか何だか知らないが、吸収力はハンパないし、防臭効果も抜群だ。だから、今CMで流れているように、40代でも50代でもオフィスで涼しい顔して人知れずオシッコをチョロっと漏らせる時代なのである。
片や頻尿のおばあさんたちの中年時代には、そんな優れた尿もれパットなんかなかった。オシッコを漏らすことは女の最大の危機、最高の恥だったわけで、ゆえに年老いた今でも「オシッコだけは何としても漏らしてはならぬ」という危機管理能力が残っていて、頻尿になっているのではないかと想像する。ならば、中年の時代から優れた尿もれパッドに恵まれ、オフィスでもレストランでも旅先でも、仲間と笑いながら平気でチョロチョロ漏らすことのできる私たちの老後は、実は安泰なのではないか。今から漏らすことを恐れず、大らかに伸び伸びと生きていれば、先々、介護士泣かせの頻尿おばあさんにはならないですむような気がする。
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by zuzumiya | 2014-04-17 00:30 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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