暮らしのまなざし

不如意なもので、すみません

使いたいのにうまく使えない言葉というのがある。
鼻白む(「はなじろむ」と読む)という言葉は「気後れした顔つきをする」とか「興ざめした顔つきをする」(小学館 新選国語辞典 新版より。以後、すべての意味の出典)という意味だが、どうも私のイメージの中では「寒くて鼻先が白くなった貧相なおじいさんの顔」しか浮かんでこず、本を読んでいて出てくると、意味的には「興ざめなのね」と分かってはいるのだけれど、自分からはなかなか使ってみることができない言葉である。
同じように、「忸怩(じくじ)たる思い」の「忸怩たる」という言葉も、これは「恥じ入る」という意味だが、映像では「じくじくと半分潰れた苺」がまず浮かんで、それを打ち消すように「うじうじした感じ」(たぶん、音が似ているから)が出てきてしまうから、これも意味がぜんぜん違ってしまうのでうまく使えない。
「どぎまぎする」という言葉にいたっては、結構最近まで「とぎまぎする」と思い込んでいた。で、違うと分かって驚いたのは「どぎまぎする」という発音のしにくさである。
「今日さ、マジにどぎまぎしちゃったよ」なんて、私は舌を噛みそうになる。口語で使う人はいるんだろうか。本来の意味は「ふいをつかれて、あわてふためく」なんだが、「どきどきする」ならわかるし、もう「どきどきする」で事足りるんじゃないかと思うが、やはり日本語には微妙なニュアンス、差異に面白みがあって、「どぎまぎ」という音の、「モッツァレラチーズ」の「モッツァレラ」みたいな“もつれたメタメタ感”がもう、あわてふためいて愚かな感じを表していていいんだろうな。だから、文章でまったく使わないということはないけれど、使うときは意識して間違えないように「エイヤッ」と使う。
それから「うそぶく」という言葉。宮本浩次なんか歌詞にも使って堂々と歌っているが、意味的には「とぼける」とか「大きなことを言っていばる」「偉そうなことを言う」とかだが、私の中ではなんとなく「嘘をつく」と「ホラをふく」が混じって、政治家のイメージしか浮かばないので、使いたいのに使えない言葉である。
言葉というのはたとえ辞書を引いて意味がわかっても、自分で使わなければ道具として自分に定着してくれない。で、使うとなると断然、しゃべり言葉、口語の域にまで入ってこないとダメな気がする。
「いや、昨日はさ、眠いのに猫に遊びをせがまれて往生してね」とか「歯が痛くって、一晩中、呻吟したよ」とか「不如意なもので、すみません」とか言って普段使いしないと。
たぶん、「えっ、今なんて言いました?」って顔されるだろうけど。
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by zuzumiya | 2014-04-12 13:37 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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