哀調の花

桜が満開だ。たしか数日前はまだつぼみだったような気がするんだが、この時期は毎年忙しくて、愛でている暇がないまま、大風が吹いて今度ははらはらと散っていく。それでも私は満開の桜より、散る桜が好きだ。桜吹雪は美しい。
女性は花に譬えられることがある。「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」なんていうのがそうだ。逆に私は花を人に譬えたりする。
椿という花。私はあの首元からボテッと落ちて事切れる感じ、あれがどうにも不気味で好きになれない。
先日、住宅街で見かけた椿は淡いピンク地に大小の真紅の筋が走った絞り柄だったが、花芯を見せて大きく花開く様は、まるで寝乱れてしどけなくはだけた長襦袢から白い肌が出ているみたいで、日本映画の女郎か花魁のようなイメージが浮かんだ。妖艶な咲き姿なんだが、そんな椿も首元からポテッ、である。幸薄い女郎か花魁が道ならぬ恋を苦に首を切って自害したあとみたいだ。
昔、詩人の小池昌代さんだったと思うが、エッセイのなかで、沈丁花を女中のような花だと書いていた。さすがは詩人、その通りだとうれしくなった。沈丁花は私のイメージでは日光が降り注ぐ日向の花ではない。どちらかというと薄暗がりにいて、しんと咲いている。匂いも花らしからぬ、ちょっとひねた奥深い香りがして、甘くて華やかなわかりやすい香りではない。花弁も肉厚で白い飴細工のような静かな光沢もある。そういうすべてが、私にはどこか“陰性の花”と思わせるのである。女中として働いている身だが、捕まえてじっくりその顔を見てみれば、色白でわりと整った目鼻立ちをした、意地のある小綺麗な顔である、といったところか。でも、椿も沈丁花もどこかそれぞれの美しさのなかに一抹の哀調を含んでいる。桜もそうだが、それが洋花でなく日本の花ということなのだろうか。


※女優でいうなら、木村多江さんはきっと沈丁花なのである。(4月5日加筆)

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by zuzumiya | 2014-04-02 16:17 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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