暮らしのまなざし

正しいことより思い出になる方を

職場の近くに保育所があって、夕方の仕事が始まる前や終わる時間には保育所から出てくる親子連れによく会う。夕方はおじいさんと孫娘、仕事が終わった7時過ぎにはノッポのお母さんと双子の女の子を探してしまう。どうしてかというと、どちらの子供たちも迎えに来たおじいさんやノッポのお母さんからちょっとのお菓子をもらって、食べながらうれしそうに帰っていくから。子供たち、さぞやうれしいだろうなぁ、と思って見ている。
先日は小さな孫娘の口から細い棒が突き出ていたので、棒付きキャンディーを貰ったのだろう。荷物を持ったおじいさんを家来のように後ろに従えてずんずん上機嫌で歩いていた。
道端で立ち止まって揉めているところに出くわすこともある。小さな紙パックジュースを持って困り顔のおじいさんを前に孫娘が「アイスがいい~」なんて大泣きしていたりする。「おじいちゃんも大変だねぇ」と心で同情するが、そんな揉めてる二人を見るのもまた可愛らしくて、私は好きだ。
ノッポのお母さんと双子の女の子は、まるでその風貌が童話の“やまんばとその娘”みたいなんだが、冬のまあるい外灯の下でちょっと立ち止まり、お母さんのバックから紙に包んだ飴玉がキャラメルのようなものを口に入れてもらい、三人が並んでのんびりぶらぶら歩いていくのを見て、いっぺんに気に入ってしまった。
保育の先生からすれば、お菓子やジュースで簡単に子供の機嫌をとることや、夕飯の前に甘いお菓子を口にするのはいかがなものかとか、食べ歩きはお行儀が良くないし、虫歯にも注意しなきゃいけないし、うがいも手洗いもなく不衛生である、とかなんとかまっとうなことを仰るのだろうが、私はぜんぜんそんなこと気にしない。たぶん、私が保育の先生をしててもそんなことは絶対に言わないだろう。
子供たちが待ちに待ってるお迎えにちょっとの甘いお菓子を持ってきて、それをお母さんと子供が一緒に口に放り込んで、「今日もお互いよくがんばりましたねぇ。ごほうびですねぇ」なんて笑いながら、そこからほっこりしてお喋りしながら、のんびり夜道を帰っていく時間がすごくいい思い出になると私は考えてしまう方だからだ。娘さんたちが大きくなってから「あの頃、お母さんが迎えにきてくれるのはうれしかったし、今日はバックから何が出てくるのかなっていつも楽しみだった。出てくるのはたいてい飴玉ひとつなんだけどね」なんて笑って思い出すのはすごく素敵なことだと思う。
昔、息子が小学生だった頃、友達に毎週金曜日には一家で“宴を開く”という子がいた。「宴ってなにするの?」と息子に訊くと、明日が休みの金曜日の夜だけお菓子やジュースをめいっぱい買って、家族みんなで好きなだけお菓子を食べてゲームをしたり、映画を見たりしてハメを外すのだそうだ。
「いいじゃん!宴」って私は思った。それ以来、我が家も金曜日はよく真似をして宴を開いた。
「親は正しいことを教えるものだ」に拘っていたら、こういう楽しい思い出は残せないだろう。思えば私はいつだって思い出の方を優先してきた。楽しい思い出になる方を直感で「よし!」として選んできたと思う。今振り返れば、それでほんとうによかったと思う。
“いいお母さん”は自分の子供にとってであって、世間様にとってではない。そもそも子供にとっては自分のお母さんはみんな“いいお母さん”なんだし。
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by zuzumiya | 2014-03-31 00:16 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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