暮らしのまなざし

当番をまっとうする人、逃げる人

寝起きでぼんやり9階の窓から住宅街の通りを雪かきする人々を眺めてたら、昨日のFIREの“心に火をつける言葉”の「世の中には二種類の人間がいる。努力をする人とその努力に頼る人である」を思い出して、ああ、今自分は他人の努力にどっぷり頼ってる、と思った。
でも。時と場合によっては、私の方が努力する人だったりもするわけで、ずーっと努力ばかりさせられたり、ずーっと他人の努力に乗っかれるなんてことはこの世にはないよ、と心のなかで言い訳しながら、住宅街でおじいさんがスコップで雪を掬っては放り投げる様子を眺めている。3回も続ければもう腰に手を当て背を伸ばしているので相当に重労働なんだろう。マンションの前のアパートは独身者ばかりなのか、誰も雪かきには出ていず、それはそれで潔い。

ふと、思う。果たして、雪かきのルールというものはあるのだろうか。
どこまで雪をかいて、その雪はどこにどのように置くのが正しいのか。マンションに住んでいるのでその塩梅はよくわからないが、自分の敷地、自分の家の前だけ雪をかくとしても、落ち葉などの掃き掃除とは違うので、どこにかいた雪を積み上げて置けばいいのか、隣との境に積み上げておくのか、でも、隣が雪かきに出遅れていて、あるいは無頓着な家で雪かきをやらない家だったとしたら、自分の家の雪をあたかも隣に押し付けてしまってるようで、なんだか心苦しい気分にならないだろうか、暗黙の了解なんて、そもそも同じモラルを持った間柄だからできることだよな、とか、考えれば考えるほど雪かきは結構気をつかうものじゃないかと思う。

隣近所が朝から早々に雪かきを始めていて、自分の家だけ出遅れていて、「今日は体調もイマイチだし、雪かき面倒だからやらなくていいか~」なんて思ってて、門を開けたら、我が家の前だけ雪がこんもり残っていて、隣近所はみんな綺麗さっぱり雪がなくなっているなんてのを見るのは、たかが雪かきなんだけど、村八分にあったように悲しいものじゃないか。逆に自分の家の前の雪が綺麗に取り除かれているバージョンも怖い。「どこのどなたか知りませんが、あい、すいません」と恐縮して、門扉を開ける音すらそーっと立てないようにするしかない。自分の家のことなのに、隣近所の目を気にして自分のペースでできないというのは辛いことだな、なんて馬鹿なことを考えていたら、娘は身支度をして、これから出かけるという。

世の中の人が汗水たらして雪かきをしているのにチャラチャラした格好でその前を通って遊びにいくなんて、まるで掃除当番をサボって逃げていく高校生のようだ。と、そこでハッとした。そうだ、雪かきというのは市内大清掃の日ということか、と思った。みんながみんな掃除当番なのである。さっきから、なんとなく参加していないことに良心の呵責というか心苦しい気がしているのは、掃除当番なのにサボっているからだ、と気がついた。
でも、スコップ持ってないし、駐車場は使ってないもん、とまたしても言い訳をする。でも、自転車はどうなってるか心配だ。ベランダから見てみると、どこのどなたか知らないが、Lの字を逆さにしたような形で雪が無くなっていた。きっと自分の通る道だけ雪をかいたんだろう。そのあまりにも厳密なやり方にちょっとせこいような気もしたが、まあ、雪かきは重労働なのでそれも仕方がない。でも、私もそこへ出て行くとしたら、やっぱり同じように自分の通る道だけ雪をかいたら、それはやっぱりせこく思われてしまうんじゃないだろうか。かといって駐輪場すべての雪かきを一人でするほどお人好しじゃない。ああ、そうだ、そもそもスコップがないんだった、なんて考えて、最終的には「明日はどうせ凍結するから歩いていくからいいや」と部屋に引っこんだ。

映画を見て、本を読んで、昼寝して。夕方近く、外の様子を見たら、住宅街の中の道が黒々として、かなりの雪が溶けていた。続いてベランダから駐輪場を見た。どこのどなたか知らないが、すべての道の雪が取り除かれていた。
息子にジュースを頼まれて自販機に行きがてら、自転車のサドルに積もった雪でもとろうとエレベーターを出たら、「うそ!」と声が出た。脇の壁になんとスコップや竹箒やデッキブラシが何本も立てかけてある。どうやらマンションが持ってる共用の雪かきセットらしい。知らなかった。おもむろに私はその中からスコップとデッキブラシを選んで、9階に上がり、共用廊下の雪の吹き溜りを掃除し始めた。申し訳程度の雪かきだったが、1階に戻るエレベーターで乗り合わせた人々には、幾分胸をはれた気がした。
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by zuzumiya | 2014-02-10 01:24 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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