良くも悪くも頑張っているのは缶コーヒーのCM群である。

先日はBOSSのレインボーマウンテンの「宇宙人ジョーンズ・マンション篇」のコピーワークについて、書きたい放題、書かせてもらった。言うなれば、悪い見本だが、悪い見本があれば良い見本もあるわけで、今回は良い見本の方を讃えさせて頂く。
まずは優等生代表として、誰もが良いCMとして認めるであろう作品。
KIRINのFIREの江口洋介の出ているシリーズ。
(江口の語りで)
「それぞれの場所がある。
 それぞれにやることがある。
 あたりまえをまもるために。
 自分の大切なもののために。
 誰もが生きている」   (「心に火を。妻へ」篇30秒バージョン)

この江口のセリフのあとに「心に火を」とナレーションが続くのだが、実にコピーワークがしっかりとしているので、商品と直結する最後の「心に火を」の言葉が一層ぐっとくる仕掛けになっている。何気ない日常の映像とのバランスもよく、CMといえどもちょっとしたミニドラマを見ているような充実感がある。しみじみとした江口の語り口が余韻と深みを生んで、たとえ30秒でも、華美で目を引く映像に頼らない、逃げない、きちんと言葉にしてほんとうを伝えたい、そんな気概に満ちているのが頼もしい。シリーズの「父へ」篇もよくできている。

同じく、FIREから私が個人的に好きなCM。画期的なことだが、1年365日の日替わりでオンエアされる名言集のCM『心に火をつける言葉』のシリーズ。例えば、1月25日放送の名言から「力量が足りないのではない、意志がたりないのだ。ヴィクトル・ユーゴー」といった感じ。初めて見たときは「こんなことって可能なのか」と唖然とした。現役時代にはこんな企画はまずムリとみなが決め付けていただろう。私がこのCMに出会うのは土曜の朝のフジテレビ枠で休日なのだが、「今日は誰のどんな言葉だろう」と楽しみにしている。見た後は一瞬でも襟を正したような気分になる(数分後には休日らしくだらけてしまうが)。
これらFIREのシリーズは「心に火を」という、まるでエレカシの永遠のテーマのような(笑)骨太のスローガンを持てていること、そこがまずCMとしての財産、勝ちなんだろう。これからも“王道”で攻めてほしい。

缶コーヒーというのは、私の現役の頃もたしか主たるユーザーは“働く男たち”だった。もっといえば、ブルーカラーだった。ジョージアの山田孝之の働く男たちのシリーズ、正確には、「週刊ジョージア・マニフェスト」篇のコピーワークは素晴らしい。BOSSのジョーンズが図らずも貶めてしまった働く男の世界をこちらはきちんと救って見事なコピーに仕上げてみせている。

自動販売機の前で山田演じる父親が幼い息子に尋ねられる。
「ねえ、パパ、この世界は誰が作ってんの?」(←やや、強引な入りだが…)
「誰って…」と笑って言葉につまる父。
「俺だ」と山田演じる鳶職の男が、「いや、俺だ」と山田演じるラーメン屋の店主が、
その後も山田演じるサラリーマンが、おまわりさんが、たこ焼き屋の店主が、宅配便の男が、道路の警備員が、「俺ですね」「いやいや俺だって」「俺だよ」「俺、忘れてね?」と次々登場する。最後に父親自身が意を決して「いや、俺だ」と宣言する。
NA:世界は誰かの仕事でできている。
「いや、僕だ」と幼い息子。
NA:ジョージア。週刊ジョージア、創缶。

という内容(30秒バージョン)だが、ナレーションの「世界は誰かの仕事でできている」という見事な着地ぶりに拍手を贈りたい。このCMの凄さは、缶コーヒーの主たるターゲットの世界に非常にマッチしたコピーに仕上げられたこと、しかもあらゆる労働をBOSSのような差別感なく、平等にきちんと讃えられているところだ。このコピーを聞いたときは「その通り!」という、何か発見したような爽快感があった。いいコピーである。

BOSSについては、現在オンエアーされている脂肪の吸収を抑えるトクホのBOSS、グリーン缶の「白い巨塔」をパロったCMは面白い。(なぜか、贅沢微糖の“贅沢していい人”の大森南朋も足を骨折して出ている!←また何か自らを犠牲にしてしまったんだろうなと予想させる細かな演出がニクイ)真面目すぎて、というか、当時は「缶コーヒーで脂肪の吸収が防げる」という商品の情報だけで十分だったのだろうが、面白くもなんともないヘルシアの缶コーヒーよりずっと“知恵を絞って”考えられている。これは評価したい。

CMはやっぱり面白いなと思う。昔もそうだったが、一部のスポンサーやクリエイターは柔軟でチャレンジ精神も気概もあって、よく頑張っている。私は別に毒舌でも辛口でもなく、いいものはいいと褒めたいだけ(笑)。いいCMを見て「いいなあ、やられたなあ、クソー!」と思いたいだけです。現役クリエイターの皆さん、さあ、今日もまた励んで下さい。
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by zuzumiya | 2014-02-01 17:21 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(2)
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Commented by OTea at 2014-02-12 01:19 x
ジョージアのコピー
「世界は誰かの仕事でできている」と、
BOSSの
「どんな仕事も誰かの役に立っている」は、
奇しくも、両者ともに、ガテン系を取り上げたものとなっており、
一見同じトーンのCMに感じられますが、この二つのコピーの出来というか、価値、性質には、雲泥の差があります。前者は働く仕事に貴賎はない、ということを、明確に主張したもので、人間を主体にして働くニンゲンすべてを讃えています。
それに対し、後者は、違います。明らかに作り手が上から目線で、ガテン系に偽善的救いの言葉をなげかけているものです。こちらのコピーを平たく表現するなら「職業に貴賎はあるが、だからといってあまりバカにしてはいけませんよ、ちっとは役に立つこともあるんですから、なんちゃって」という感じになります。だから、ウソくさい、人間不在の物言いになっており、もっといえば、そのコピーのうらで薄ら笑いする作り手の姿が見えてしまうのです。
数々の名作を産んで来たサントリーの広告にも、このような失敗(本音の吐露)はありますね。
Commented by zuzumiya at 2014-02-12 23:49
Otea様、またもコメントくださり、ありがとうございます。
私も最初にジョージアのコピーをテレビから聞いた時には「ああ、いいコピーだな」とすぐに思いました。同時期に同じ缶コーヒーで“仕事”という言葉を入れたコピーがオンエアーされて、出来の優劣がはっきりついてしまい、少し可哀想という気にもなりますが、要は企画は細部まで、最後の最後まで、気が抜けないということだと思います。ジョーンズのシリーズは面白いには面白いので期待度はいつでもピカイチだとは書いておきます(笑)。CMネタでもう少し書いてみたいこともあるので、また読みに来てください。ありがとうございました。


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