BOSSの宇宙人ジョーンズ「マンション篇」ってどう思う?

このブログでも二度にわたって取り上げてきた缶コーヒーBOSSのCM。
今度はレインボーマウンテンブレンドの方。おなじみ「宇宙人ジョーンズ・地球調査シリーズ」の最新作、「マンション篇」について、少し書かせていただく。
サントリーのサイトへ行くと30秒と60秒バージョンのCMを見ることができるが、どちらもストーリーはだいたいこうだ。
風間杜夫扮する先輩マンション管理人と新人のジョーンズの二人。共用廊下の蛍光灯を取り替えている。「この惑星では定年の後も働かなくてはならない」いつものジョーンズによるナレーション。管理人室で弁当を食べながら「手に職があるわけでもなし、何の取り柄もないんですよ」と愚痴る風間。そこへ住民からのクレームの電話。「音がうるさい?」
行ってみると、玄関口には縄跳びを手に息を荒げている太った男。「縄跳びは外でやっていだだけますか?」と風間。次はベランダでもうもうと煙を出してバーベキューをやっている外国人たち。「ベランダ、バーベキュー、ノー!」とカタコト英語で必死に懇願する風間。自転車置き場では天井にできた蜂の巣を箒で払おうとして蜂の襲撃にあう。ジョーンズが不思議な力で蜂を蝶に変えて風間は難を逃れる。夜になり、再び管理人室。テレビからはSMAPの中居くんが調子はずれな声で歌ってる。「この人たち、何だかんだで、よく頑張るよなぁ」と風間。すると、管理人室の小窓から親子が声をかける。「今度は何ですか」と厳しい顔で立ち上がると「管理人さん、蜂の巣、助かりました」「いつもありがとう」の言葉。思わず、風間の顔に笑みが。「ただ、この惑星では、どんな仕事も誰かの役に立っている」とジョーンズのナレーション。
(※このナレーションはすべて30秒バージョン)

はじめて見たとき、正直、ムッとした。
どこにムッとしたかと言えば、最後のナレーションのコピーワークにである。
「『どんな仕事も』の“どんな”ってなんだよ! けしからん!」と思ったのだ。
「どんな仕事も」の「どんな」という言葉づかいには、実は非常に差別的で、上から目線的なニュアンスが含まれている。「どんな」は単純に「あらゆる」という意味には置き換えられない。「あらゆる」は「ありとあらゆる」であり、価値の大小を比べず、あくまで横一列にすべてが並列、平等である。でも、「どんな」という言葉にはもっとピンからキリまでのニュアンスがあって、「些細な、取るに足りない○○でさえも」というようなマイナスな要素をどうしても含んでしまう。「どんな仕事も」と言われた仕事は、世間的にはあまり好ましくない、いい評価を得られていない、人気がない、というような仕事であったりもするのだ。言葉選びの感性みたいな話なのだが、微妙な話でうまく伝えられていない気がするが、私の言いたいことがわかってくれるだろうか。
嫌味だなと更に思ったのは、その「どんな仕事も」と言われた代表選手が管理人職で、中高年がリストラされて、再就職先にいちばんに思いつく仕事だったりするわけで、だからこそ、風間にセリフで愚痴らせてもいるのだが、作り手側は「そんな中高年を励ましたいという願望を込めた」とでも言い訳しそうだが、見ている方は、ホワイトカラーのクリエイターの若造たちから「それでも大事な仕事なんですよねえ」とただ見下されているような、嫌味な感じしかしないのである。もっと言えば、例えば風俗業のような仕事をもってして、「どんな仕事も誰かの役に立っている」という映像だって作れたわけで、そういうことはさすがにヤバイという感覚が働くくせに、マンションの管理人には平気で「どんな仕事も」という言葉をやすやすと当ててくる、その感性が偽善ぶってて、嫌味だと思う。
いつも書いてきたが、一人のクリエイターが作った企画やコピーでも、必ず会議で何人ものチェックに晒される。関所みたいなところをいくつも通って、ようやくオンエアーされるのに、どうして誰もこのコピーワークの“蔑んだニュアンス”に気がつかなかったのか。それだけクリエイターたちや企業のお偉いさん方は誰もが別の場所にいて、驕り、お高くとまっていることに気づかないものなのだな、とも思ってしまう。「どんな仕事も」と言って、一瞬救っているようだが、実は貶めていることにちゃんと気づいてほしい。
ただ、30秒バージョンはこのコピーワークだが、60秒バージョンは違っている。
「ただ、この惑星で働くことは誰かの役に立っている」できちんとしめている。「どんな仕事も」でなく「働くことは」になっているのだ。もともとはこちらの意味、ニュアンスだったのだろうが、30秒も絶対これでいくべきだった。短くしなければならないからといって、最も重要な最後のコピーを失敗しては台無しだった。そのことを付け加えておく。
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by zuzumiya | 2014-01-25 21:24 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(2)
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Commented by Otea at 2014-01-28 22:24 x
はじめまして。
オンエアで見ることはなかったので、サントリーのホームページまで行ってはじめて観ましたが、本当にひどかったです。作り手の明らかな職業差別を感じました。風間が「なんの取り柄もなくて」と、愚痴ってるあたりはさらにその差別の方向性までも示唆していたように思います。「どんな仕事も」、そう、「こんな仕事でも!」、という、職業のレベルの低さを自他ともに認めているという前提が、高慢でいやらしいですね。そして、今までは、上等に感じられた「このろくでもない、すばらしき世界」という、コピーまでも、「ろくでもない職業でもいいじゃないか」くらいの低俗なフレーズに堕ちてしまっているようで、残念でした。
玉稿は、「誰かの役に立っている」という、救いと見せる偽善の言葉の裏に潜むハッキリとした職業差別意識について、冷静に指摘できていると思いました。
Commented by zuzumiya at 2014-01-30 15:46
はじめまして。Otea様。コメントありがとうございます。
同感して頂けてうれしいです。言葉の選び方の話で、サラリと聞き逃しそうになるのですが、言葉を扱うコピーライターとしてはとても大きな失敗をしでかしたと思います。「こんな仕事でも!」と視聴者に感じさせてしまうということが私も書きたかったんです。仰るとおり、最後の素晴らしいコピーまでも地におちてしまった感があります。ひたすらに残念です。


ふだんの暮らしに息づいているたいせつなもの、見つめてみませんか?


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