介護職の男性に思うこと

老人ホームで働いていて、ふっと心がなごむ瞬間がある。
それは、男性スタッフが自分の母親ほどのおばあさんと向き合って、ぱちんぱちんと爪を切っているのを見かけた時。あるいは、食事をあげる時、一緒になって「あ~ん」とぽっかり口を開けているのを盗み見た時。なんだか微笑ましくて、いいなあと思う。
以前は男性スタッフが福祉の世界にいることに対して、少しばかり偏見を持っていたと思う。
女性ほどに細やかに神経が行き届いて、心のこもったやさしい言葉がけや親身になったお世話ができるのだろうか、社会的に必要不可欠な仕事ではあるけれど、会社の営業職のように男子一生の仕事としての自負や矜持を本当に持てているんだろうか、などと思っていた。
特に最近はリストラや倒産などでやむなく職を断たれ、慢性的に人手不足の介護の世界なら比較的入りやすいという理由で門戸を叩く男性もいるだろう。
そういうやんわりと色の入った眼鏡で見ていたが、いやいやその実、彼らはほんとうによく働くことがわかって、いつの間にかかけてた眼鏡がずり落ちていた。
こんなことを書くのは少し憚られるが、最近は女性が強く逞しくなっているぶん、むしろ女性スタッフの方が言葉の調子がキツかったり、態度が横柄だったり冷ややかだったりもする。女同士ということで赤の他人といえども、長く接しているうちに母と娘やお嫁さんとお姑さんのような、容赦しないで言いたいことをズバズバ言う関係にすり替わってしまうのかもと思う。逆に男性スタッフの場合は関係性がほのぼのとした母と息子になれている。食事介助をしていても、女性スタッフだと口をあけないのが男性に替わるとすんなり口を開けるというおばあさんもいる。
先日、廊下を歩いていたら、トイレの介助をしている男性スタッフの声が聞こえた。
「あらま、気持ちよさそうな大きなオナラして」
ふと、こんな声掛けのできる男性介護士と熱愛なんて果たしてできるものだろうかと思ってしまった。
これも偏見にすぎないんだろうが、男性介護士はおばあさんたちのお風呂の世話や下の世話をしているわけで、そうするとつまりは、どんなに見事なボディーで美しい女性でも、老いの行き着く果てのグロテスクな姿をすべて知っているということで、そうなると、長く介護の仕事に携われば携わるほど、やっぱりどこか女性というものに対して諦念というか、ゆるやかな幻滅というか、「所詮、どんな美人も骨と皮と肉と脂肪でできた塊なんだよねえ」というような達観に陥ってしまっていて、おばあさんとはいえ女性に向かって「今日はたっぷりウンコが出てよかったね」なんてにっこり笑える世界の人であって、そういう人とテラテラした恋の駆け引きや恋愛ゲームなんてのを愉しむこと、ほんとにできるんだろうかと思ってしまう。
老いの姿の、人間の終末期の凄みに日々慣れ親しんでる人たちには、女性としての上っ面のどんな虚飾も虚栄もすべて見破られて(それこそが女心なのだけど)、見透かされてしまいそうで、ひどくこちらの行いが子供っぽくてチープな気がして、太刀打ちできなそうだ。
今度、男性スタッフと飲む機会でもあったら、介護職を始める前と後の女性観の変化について是非とも訊いてみたいと思う。うちの職場はなぜかバツイチが多いらしいが、そういうことにも関係しているのかどうかもあわせて考えてみたい。
[PR]
by zuzumiya | 2013-12-14 00:16 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://zuzumiya.exblog.jp/tb/19144742
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。


ふだんの暮らしに息づいているたいせつなもの、見つめてみませんか?


by zuzumiya

プロフィールを見る
画像一覧

S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

※このブログの無断な転載はご遠慮願います。

最新の記事

恐るべきシーリングライト
at 2017-08-20 09:25
私という有限
at 2017-08-16 20:44
こんな体たらく
at 2017-08-14 19:30
「more records」..
at 2017-08-12 06:24
生まれ変わっても会いに行く
at 2017-08-07 20:48

最新のコメント

検索

ブログジャンル

画像一覧