暮らしのまなざし

「違う!」のブザー

23年もの長きにわたって、“妻”であったわけで、その枠が外されて、ぽんっと世間に置かれてみると、ほんとうに自分は心もとない。私はこの年でひとりの女性(オバサンと書きたくなるが)として、ただ呆然と立っている。
先日、母の店を手伝った。酔っ払いのオジサンがふざけて私にチークダンスを迫ってきた。
素面の私は何度も断ったが、相手は母の店の常連のお客さんである。断りきれずに踊った。
酔っ払いが嫌だったんじゃない。手を組み、肩を寄せ合ってくっついたあの感じがもう、だんぜん、「違う!」だったのだ。昔だって満員電車に乗れば、サラリーマンの体にぴったり触れてしまうこともあったが、そういう時もだんぜん「違う!」と思った。そんな時「ああ、私はどうしようもなく夫の妻なのだなぁ」としみじみ思ったものだった。
自転車ですれ違う男性、道を行く男性、スーパーで見かけた男性…。ただひとりの中年女性に戻った私は、ほんとうは誰とでも付き合えるはず、自由に恋愛ができるはず。
でも、今の私は誰を見ても、誰と想像しても、そういう気持ちになれない。どこかで「違う!」のブザーが生きている。そう思うと、もしや永遠にこのブザーは取り外せないのかも、と不安になる。肩を抱き合った瞬間「ああ、しっくりくる」という安らぎはもう二度と味わえないのだろうか。こんなふうに書くと、「旦那さんがいちばんしっくりくるんでしょ?」と言われそうだが、実はもう、そうじゃない。
だからこそ、不安なのだ。胸がすうすうして、呆然と立ち尽くすのだ。
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by zuzumiya | 2013-11-25 23:28 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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