暮らしのまなざし

夫婦にピリオドをつけて

a0158124_17283495.jpg仕事の合間にブツ切れなんですけどhuluでドラマを見てました。TBSの日曜劇場の『夫婦。』(2004年放映)。田村正和と黒木瞳が子供を二人育て上げた結婚25年の夫婦役をやっています。うちも23年ですから、興味があって見てました。
大雑把なあらすじを書けば、ひょんなことから夫が浮気して、それがバレて、妻が長年の結婚生活への不満をぶちまけ、夫は平謝りに謝っていったんは関係が修復しかけたんですが、やっぱり妻はおさまらず、結婚記念日のことだったっけかな、売り言葉に買い言葉で大喧嘩して妻は家出。でも、家出の過程で妻はあらためて社会というものに触れ、そこで懸命に働く女性たちのまぶしさも垣間見て「今度は自分の頭で、自分で判断して生きてみたいの」と勢い離婚を申し出ます。
こんなふうに書くと、ドラマや映画の夫婦によくありがちなパターンを踏んでるんですが、面白いのは「思い返せばいい思い出もいっぱいあった」という結婚25年の重み、出来上がってしまった家族としての動かしがたい情なんです。
向かうべきゴールの離婚をチラチラ見やりながら、「でも、どうしよう」「ほんとうにこれでいいんだろうか」と行きつ戻りつしている夫婦の微妙な心情がセリフや表情に表れていて、「結婚10年や15年選手でも、こういう感じはきっとわからないんだろうな」と思ってしまうほど、そこには深みや滋味がありました。
夫が娘の結婚式で挨拶した時のセリフが、またよかったです。

「夫婦というのは、もしかしたら、自分が生きてきたことを誰よりも相手にわかってほしいと思ってる二人なのかもしれません。この広い世界で、この人にだけは自分が精一杯生きてきたことを憶えておいてほしい、自分という人間がたしかにいたことをその人の口から誰かに伝えてもらいたい、そんな人を選ぶのが結婚なのかもしれません」

このセリフを聞いた時に、はたと思い出したものがありました。
私の夫が出て行く前に“家族の年表”を渡してくれたんです。彼はとても几帳面な人で、息子と娘それぞれの生まれた日から一歳ごとに起きたいろいろをパソコンで簡単な年表にまとめていました。4歳のときに娘はこうま組で先生は中西先生だったとか、息子が5歳のときに初めて滲出性中耳炎を起こしてたとか、2006年の5月には家族で千葉の白浜海岸に旅行してるとか、それには書いてあって。貰ったときには「子供たち、喜ぶだろうなぁ」としか思わなかったんですけど。そして実は、子供たちほど細かくはないんですが、私の年表もあって、ちゃんと0歳の池田産婦人科から始まってるんです。「これから先はそっちで足していって」と手渡されたあの年表のことを、ふと思い出していました。
何者かになりたくて、でも何者にもなれなかった自分のようなちっぽけな人間でも、生きていたっていうささやかな歴史をあたたかみを持って憶えておいてくれるのは家族だけなんだってことを、先のセリフであらためて思い出しました。
48歳のところにボールペンで「10月、夫と別居」と書き込み、50代、60代、70代、80代と続いていく年表の空欄に「これから先はあの人のことは何もわからないのか」と思って、しみじみとしたことを憶えています。

ドラマの話に戻ります。見ていて何度か涙することもあったんですが、よかったのは夫婦二人で離婚届を出しに行った役所で一緒に指輪を外すシーン。指にくっきり指輪の跡が付いてるんですよ。もう25年のね、跡なんですよ。あの指のアップには泣けました。それに続いて、夫が「お前の人生の貴重な25年間、俺のためにありがとう。一生に一度しかない、大切な一日を、一時間を、一分を、俺のためにありがとう」って、涙をにじませながら言うんです。あれにはテレビの前の奥様たちも、たとえ実際の夫からは何にも言われなくとも「ああ、この言葉が聞きたかったんだ」と涙し、じゅうぶんに癒されたんじゃないでしょうか(笑)。

このドラマのラストは、ネタバレになってしまいますが、一年後のクリスマス、一年間音信不通だった妻がプレゼントを渡しに夫に会いに来るんです。実は新婚旅行の際に泊まった旅館に住み込みで働いていて、司書資格の勉強をしているんだけど、現実は厳しいと弱気になって落ち込んで、夫の顔を見に来たんですが、そんな妻に「いつでもいいから」と夫は今度は婚姻届を渡すんです。
妻は受け取り、胸に抱きながら去っていくんですが、その表情はやわらかでやっぱり嬉しそうなんです。実際にこのあと再婚するのかどうなのか、それは「視聴者の皆様のご想像にお任せします」なんですけど、あの婚姻届は彼女にとってきっと“お守り”になるんだろうな、とは思いました。ここへきて、ようやくタイトルの夫婦の文字の次に「。」がついていた意味が、その良さがわかりました。
ドラマのなかの架空の二人ですが、いつかあらたに成長した姿で晴れやかに出会い直して、また夫婦になるかもしれないし、親友のような関係になるかもしれないと思えてくる。いったん自分たち夫婦の歴史に自分たちでピリオドをつけて終わりにしたけれど、でもだからこそ、そこから見えてくるものがあり、そこから学んで、また始めることができる。思えば、人生はピリオドをつけて終わり、また襟を正して始めるの連続でした。
テレビの前の奥様方の中には「え、嘘でしょ?離婚届を出して一年でまさかの婚姻届?」とツッコミたくなる方もいたでしょうが、演出的に恋愛もののラストシーンの盛り上がりとして上手いテクニックというほかに、何度も言うようですが、私にはやはりこれが結婚25年ってことなんだよな、と思えてくるラストでした。
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by zuzumiya | 2013-11-17 13:12 | わたしのお気に入り | Trackback | Comments(0)
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