“あなた”という誰かへ向かって

先日、ここで「ブログを続けるかどうかを考える」と書きました。
あれからしばらくの間、日記を書くこととブログを書くことの違いや自分がブログを始めたわけ、ブログで何がしたくて何を目指していたのかを改めて考えていました。
ネット上で文章を書くことを「全世界に発信する」とか「晒す」とか表現する人もいます。
テレビのあるコメンテーターは「通りで大声で叫ぶことだ」とも言っていました。
確かにこのパソコンの画面の向こうには見えていないだけで、顔も名前も知らない、国をも超えた、想像できないくらいたくさんの人々が存在しています。そして自由に繋がることができるのです。
でも、正直なところ、私はそのスケールの大きさや意味や恐さを頭では理解しているつもりですが、心では全然、違うことを思っています。
以前に「優れたエッセイはすべて私信の趣をもつ」と書いたことがあります。いいエッセイに出会うと、まるで旧知の友人が私に宛てて書いてくれた気軽な手紙のような親しさと懐かしみを覚えてうれしくなります。
私にとって、私の文章がたとえ全世界に通じるネットの中にあっても、書いている今この時の気持ち、あるいは「書きたい」「伝えたい」という衝動は、どこへ向かうものかと言えば、広く大きな“全世界の人々へ”ではなく、ただひとりの、画面の前にいる“あなた”という誰かへ向かっているのです。 “ものを読む”とか“何かを受け取る”ということがそもそも一対一の関係性の中にあると思っているからです。
だから、昔書いていたブログの文章に「わたしみたいなあなたへ」と題したのもそういう理由からです。結果的に全世界へ発信していることになっていても、私の心の目が捉えて、語るべき相手として今必要なのは、“あなた”ひとりしかいない。そのたったひとりのあなたへ向かって私の想いは集中し、できれば手紙のような親しさで届く何かを書いていたい。心はいつでもそう願っています。
でもこれは、私だけの特別な考えというものでもない気がします。多くのブロガーたち、あるいはもっと広げて、“ものを作る人たち”は、たぶん、同じような気持ちで臨んでいるのではないかと思います。漠然と“万人”へ、“大衆”へ向けてというスタンスでは、自分のほんとうの気持ちや想いの芯はうまく定まらず、伝えることが難しいのではないかと思うのです。
私が日記の内省よりもブログでの繋がりや通い合いを選んで書いてきたのも、きっとこの世界の何処かに「わたしみたいなあなた」がいてくれて、私の書いた文章を読んで一緒に泣いたり笑ったり、頷いてくれるはずだと不思議と信じてやまないからで、それが書くこと、書きたいと思うことの原動力であり、そういう“捨てきれない希望”をひとつ大事に持って生きていくことはいいものだと思っています。生きていれば孤独感はあるけれど、それでもきっと私は一人じゃない。そう信じられることはどこかで大きく幸福なことだと思うのです。

だから、こうしてブログで書くことを止めないでもいいのではないか。そう思いました。
ある人は「まるで依存症だね」と揶揄するかもしれません。
でも、私にとって書くことをやめることは、心の中の目をそっと閉じること。うつむいて見て見ぬふりをすること。感じることをやめること。考えることをやめること。
そして、誰かと繋がろうとする素直さと人間的な温かみを捨てて、頑なに閉じること。
信じることをやめること。
すべて自分自身を削り取られ、生きていくうえでの大切な何かを失っていってしまうことのように思えます。

またここで「わたしみたいなあなた」へ向かって書いていきます。
長く続いたブログで、私の人生にもいろんな出来事がありましたが、48歳にして今度は離婚というものを経験しようとしています。自分が決めたことなのに、何か大きな運命の流れに乗ってしまって、あれよあれよと流されていく感じがします。夫婦が人生のテーマと思ってきた私が「さぁ、どうしよう」と困ってもいます。
これから何をどう感じて、私がどう変わっていくのか、変わらないのかわかりませんが、すべては心の赴くまま書いて、確かめてみるしかないようです。

そこに“あなた”が見えているから、見てくれているとそう信じられるから、
私はまた、“あなた”へ向かって書いていきます。ありがとう。
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by zuzumiya | 2013-10-20 10:53 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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