村山由佳と考える「もう一人の自分」

今、ちょっと村山由佳という作家に興味を持っている。
読んでみたいのは彼女の作風ががらりと変わったとされる『ダブル・ファンタジー』とその後の『放蕩記』だ。実は精神科医の斎藤学との対談を収めた『「母」がいちばん危ない』という本を読んで、ハッとする文章があって「これは読まなくては」と思ったのだ。
村山さんという人は、昔はなんだか鴨川辺りに住んで、野菜作って田舎暮らしを楽しみながら“青春恋愛もの”を書いていたそうだが、デビューしてから十年、仕事に理解があって家事全般をしてくれる非常に献身的な旦那さん(糟糠の妻ならぬ夫)を置いて家を出たきっかけが、一部ではエロ小説と揶揄されている『ダブル・ファンタジー』を書きたいがため、だったらしい。(たしかどこかのインタビューで「黒の村山由佳をお楽しみください」と本人も言っていたような…)
元旦那さんはものすごく協力的で献身的なのに、今の旦那さんは「気が向いた時にぷらっと帰ってくる、また何も言わずにぷらっと出て行く。でも、そばにいると何か安心感がある(本文より)」という人で、村山さんに家事もやらせる人だという。仕事するなら何でもやってくれる献身的な方がいいと思うんだけど、彼女に言わせると違った。
【本当に尽くしてくれたんです。デビューからの十年間。私もそこに甘えて、たくさん原稿を書くことができました。心の底から感謝はしているんですけど、だけれど、それも一つの「支配」であったのかなと。】(本文より)
この「心の底から感謝はしているんですけど、だけれど」という言葉の重ね方、私も同様に感じてるから笑っちゃうんだけど、でも「支配」だったっていう言葉、目からウロコだった。本を読んでいくと村山さんと私は似たところがあって、とにかく人の目を気にする。本人はそれがとにかく嫌なんだけど、どうしてもそこでがんじがらめになる。彼女のその習い性は母親からの支配で、私の場合は育ての親の祖母からの支配だ。でも、恐ろしいのは、それらの「支配」が実は母親から夫へ、私の場合は祖母から夫へスライドしたにすぎないんだってことが斎藤先生との対話でわかって、いろんなことが「ああ、そうか」と腑に落ちた。
結婚して夫を得て、ようやく母親からの支配から逃れられると思ったら、人を替えただけだったという“支配のスパイラル”。私の夫もものすごく献身的ないい夫だ。拙著を読んでくれた方は、決まって「素晴らしい旦那様ですね。羨ましい」と感想を送ってくる。でも、暮らしていくうち、強い父性だとばかり思っていたものが、ただの支配欲なんじゃないかと思うようになった。子供だけじゃなく、ペットへも、そして彼から見れば最初の子供にすぎなかった私へも…。私の母が娘に「どうして、かずみは旦那にあんなに下手に出るのか」と漏らしていたというから、男女関係に苦労してきた母には見えていたのだろう。
村山さんのように嫌だ嫌だと思いながらも、母の目、他人の目を気にして優等生を引きずって生きてきて、ある時バーンと爆発して、「私ってほんとはこんっなにドロドロでブラックなんですよ」と「もう一人の自分」をさらけ出して、「境界線を越えてゆけ」というタトゥを入れて「作家はひとでなし」と公言するまで堕ちたくなる気持ち、実によくわかる。私にも彼女のような「もう一人の自分」がいて、今はまだなんとか蓋ができているが、この先、「夫の愛は支配欲にすぎなかった…」と思いながら、何十年も一緒に暮らしてそのいちいちを確かめていくのかと思うと、果たしてその蓋がもつだろうかと思ったりする。
とにかくまずは『ダブル・ファンタジー』と『放蕩記』の中に答えになるかどうかはわからないけれど、何かを探してみようと思う。
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by zuzumiya | 2013-08-17 14:40 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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