無言の圧力

声の大きい人が得をするという話はよく聞く。例えば、会議の意見でも何かのクレームでも声が大きいというだけで迫力があって自信に満ちあふれ、それゆえ非の打ち所のないまっとうなことを言っているように聞こえてしまう。
けれど、それとは逆に言葉を何にも発しないというのも周囲を気圧す力があることに最近、気づいた。
仕事場に若い子がいる。私が流しで洗い物をしていると、突然、私の脇へドスンとバケツを置く。はたまた、洗い物をしている私の肩からいきなり手を伸ばしてきて、向こうの棚に置いてある雑巾を取ろうとする。すべて「すいません、ちょっといいですか」の言葉がけもなく、無言でする。最初は虫の居所でも悪く、あるいは私を嫌っていて、私と口をききたくないのかと訝ったが、帰り際に面と向かって話しかけると普通ににこやかに返すからそうでもないらしい。そのうち、その子の無言の行動は誰に対してもそうで、決して悪気があるわけでなく、単に“コミュニケーション下手”、“言葉足らず”なのだとわかった。
しかしそうは言っても、「すいません」の言葉もなく、強引にそういう事をされていい気はしない。いつでも私が相手の気配に気づいて、つい「あ、ごめん」「あ、失礼」と謝っては体を避けて場所を譲ってしまうのだが、「なんで、私の方が謝らなければいけないんだ」と思う。私は別段、邪魔になるような位置にいたわけではないのだから。
人と一緒に何かをしていたり、人がそばにいるのにもかかわらず、自分のやりたいことをやりたいように通そうとして、相手に「すいません」の言葉も言わずに、体が先に動いてしまうというのは、いかがなものか。
無言であるそれだけで「もしかしたら、今怒ってる?」「私、何か悪い事した?」と人をじゅうぶん不安に陥れるし、何よりいきなりの動きは人を驚かし、人をひるませる。そこには無言であるがゆえに放つ“無言の圧力”がある。
あるいはまたこんな場合も。PTAの役員決めで、クラス中の母親たちがみんな黙って俯いている。あの時の“無言の圧力”。あの気詰まりな雰囲気が嫌で、早く終わらせたくてやりたくもないのに立候補の手を挙げたという人もいるだろう。
このように周りを気圧すのには声が大きいばかりじゃない。無言であること、ただそれだけで十分だったりするのである。
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by zuzumiya | 2013-07-19 01:20 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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