春が立つ

サッシの向こうは裸木の枝を大きくしならす風が吹いていても、陽差しはぐっと白みを増して強く明るくなっている。気がつけば陽のあたる膝が熱いくらいだ。
今日は節分。そして明日は立春。その後の暦は雨水、啓蟄と生命の息吹を感じる泥くさい言葉が並ぶ。
ああ、春か、と思う。季節が回ってまた巡りくることをいちばん清新な気分で思いだすのはやはり節分、立春のこの頃だ。
春が立つ。昔の人は素敵な言葉を思いついたものだ。
先日、住宅街を自転車で走っていて、初めて曲がった道の先で突然、花の香りが鼻をかすめた。見ると一軒の廃屋の庭先に、細い幹の小さな蝋梅がしとやかに咲いていた。
人が住まなくなってずいぶん経つのだろう。庇のビニールトタンは大きく傾げて、無残にもボコボコと穴があいている。すべてが壊れ崩れ果てている廃屋の土色の景色の中で、ほつほつと咲いた薄黄色の花だけが日差しの祝福を受けてぼうっと浮かび上がって見えた。
言葉の由来は知らないが、このすっくと立った蝋梅を見てから、立春の“立つ”というのは樹木の立つこのような健やかな佇まいのことでもいいような気がした。
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by zuzumiya | 2013-02-03 12:42 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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