暮らしのまなざし

言葉足らず、気持ち足らず

ようやく仕事絡みでなく、変な罪悪感もなしに好きな本を読めるようになってきました。
今日も買い物の帰りに図書館に寄って本を受け取ってきました。カウンターの前で「本が来ていると思うのですが…」とカードを出すと、20代後半ぐらいでしょうか、若い女性の職員がウンともスンとも言わずに受け取って、書架に本を探しに行きました。一瞬「あなたに口はないの!」と思いました。彼女はすたすた本を持ってきて貸出の処理をし、「11月3日までとなります」とだけ言って私に本を差し出しました。顔を見るとあまり表情はありませんが、特に機嫌が悪そうという雰囲気でもありません。単純に「言葉足らず」なのだと思いました。「ありがとう」と言って私は受け取りましたが、必要最低限の会話しかしない(いや、この場合は挨拶からして、していない)それで仕事が成り立っていて許されていることに何だかちょっと腹立しい気持ちがしました。
私のいた図書館は指定管理として区からすべてを任されていた館でした。
3年の間に利用者を増やし、利用者の満足度も上げなければなりません。カウンターに立てば必ず「おはようございます」「こんにちは」の挨拶を笑顔でして、本を借りていく行かないにかかわらず、すべてのお客様がゲートを出て行く際には「ありがとうございました」と頭を下げていました。それはまるで商売をやっているような、本屋さんのような感じでした。
このブログでも以前に書いたと思いますが、こちらが「こんにちは」と明るく挨拶をし続けていれば、どんなお客様も最終的には声を出さずとも軽く会釈をして、必ず挨拶を返してくれるようになります。それはかなりうれしいものです。
平日の公共図書館の利用者はほとんどが近所のお年寄りと小さい子供を連れたお母さんです。もしかしたらですが、この「こんにちは」が今日誰か他人に向けて最初に口にした言葉かもしれないと思えば、挨拶はもう立派な会話なのだと思えます。一人暮らしのお年寄りや一日中赤ちゃんのお守りをするお母さんにとって、そういう可能性は十分ありえますし、挨拶程度でも誰かにちょっと気持ちを向けられることは孤独な気持ちがほぐれて、うれしいことなのではないでしょうか。
カウンターに立っていると実は話しかけてくれるお客様は多いものです。本の話だけでなく、天気の話やお孫さんの話、体調の話などほんの1、2分の立ち話ですが、一対一なので、必要なこと以外に話しかけてくれるその気持ちは私に向けられたものとしてうれしかったです。それと同時に、人はみな、誰かと笑顔でちょっとお喋りしてふれあいたい、そういう一日を持ちたいものなのだなと思いました。
「私は先だってまで大病してましてね。家に居ても鬱々としてしまうので、ここへ来るのがリハビリと思ってるんです」などとこちらから聞いてもいないのに、胸のうちをそっと打ち明けてくれたお客様もいて、ちょっとした会話の大切さを痛感しました。「個人的な話はしてはいけない」と研修でも教えられていましたが、私は人間である以上、臨機応変だと思っていました。
誰かと気持ちよく挨拶を交わしあって、笑顔を見たり笑顔になったり、そこからちょっと話しかけてみたくなる、そんな気持ちがある日ふっと湧き上がる。本と人とを結びつけるだけじゃなく、人と人とがふれあうささやかな場所に公共図書館がなっていることに、もっと多くの働く人たちが気づかなければならないと思います。図書館で働く人間だから、立ち居振る舞いだけじゃなくなるべく口もきかず必要最低限な話で静かに、というのは「言葉足らず」が「気持ち足らず」につながると私は思います。いつもの場所、なじみの場所。町の図書館が暮らしのなかにそんなふうに安心できる場所としてしっかり根付くためには、そこで働く人間にもまず心地よさを求められていることを大切に思ってほしいものです。
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by zuzumiya | 2012-10-18 13:47 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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