絵はがきの絵

先日、講演会の仕事でお世話になった講師の先生から絵はがきを頂きました。精神的な不調で約束をお断りさせて頂く旨の手紙を送ってすぐの返信でした。大きな病気を経験された方なので、控えめに、でも真摯に、私の心身への気遣いの言葉が綴られていました。
「あなたの意志に添い、ジッとおとなしく会える日を待ちます」のやさしい言葉に、先生の愛くるしい笑顔を思いだし、しばし温かい気持ちになりました。
絵の方は、薄緑色の壁の洋風な家に白い窓枠の大きな窓が二つ、左右に描かれています。窓辺には赤やピンクや白い色の花が植えられています。左側の窓は閉じられてカーテンが引かれ、右側の窓は開いていますが室内はまっ暗、窓辺に吊るされたカナリアの鳥かごが日を浴びて金色に光っています。表に“長野県信濃美術館 東山魁夷館”とあるので、東山魁夷氏の油彩だとわかりました。
先生の心のこもった文章を読んでから裏返し、絵をじっくり眺めていると、今の私という人間が見事に表われているな、と感じました。片側の窓のしっかり閉じられたカーテン、鳥かごのカナリア、そしてその背後の深い闇。闇のせいか、カナリアは少し寂しげに見えます。明るさのなかにも静かな孤独が感じられるのです。今の私はきっとカーテンがきっちり閉じられた窓の奥にいるのでしょう。あるいは鳥かごの中のカナリアかも…。
外の世界は花が咲き、明るい光に満ちているのに、隔絶されている。片方の窓が開いているのは、かろうじて世界とつながりたい気持ちや中途半端な戸惑いを表しているようです。そして、カナリアの私は明るい窓辺にいても、かごの中。そこに先生の言葉以上のメッセージを感じました。
「今のあなたの姿ですよ」
「窓は開いているじゃないの、外はこんなに素敵ですよ」あるいは
「いつかそこから飛び立って、もう一度、世界の素晴らしさを歌ってごらんなさい」
言葉としてこうやって書いてしまうと、あまりにストレートすぎて、心が弱っている者には少々強引です。絵の中から、そのときどきの気分で解釈可能な絵というゆるやかなものの中から、ほのかに立ち上がってくるそんな程度でいいのでしょう。絵はがきの持つ言葉だけでない、絵と合わさった表現力、魅力に改めて気づかされた思いがしました。
私の今の精神状態から、この絵はがきを選びとった先生の感性も見事ですが、そういう魂の微妙なやりとりができた先生との絆や縁もまたうれしく思えました。
言葉だけでなく、その絵の中に送り手の言葉にしていないさまざまな想いの機微が込められている絵はがき。素敵です。
「たまにこうしておはがきくらいは出してもいいのかしら?」と書いてくださった先生とゆっくりと絵はがきのやり取りからまた始めるのもいいかな、と思います。今この素敵な思いつきをどんな一枚から始めようかと、ワクワクしている私がいます。
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by zuzumiya | 2012-10-17 10:29 | 日々のことづけ | Trackback | Comments(0)
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