暮らしのまなざし

「過ぎていく」の詩情

エレカシの歌詞のなかにたびたび出てくる、「過ぎていく」という言葉。
この「過ぎていく」あるいは「過ぎゆく」という言葉を書いてしまう、そして万感をこめて歌う宮本浩次という男が私は好きだ。「約束」の歌詞は「しがない日々 でっかくてもちいさくても まちがってなんかない 自分との約束を叶えろ」など、素晴らしいフレーズが光っているが、後半部の「ベイビーベイビー 過ぎていく」「ベイビーベイビー 空は青い」の2行! この2行に込められた想い!さぞやと、溜息が出ないか。

そうだよね、過ぎていくんだ。みんな、みんな…。
そうして、空だけがなんでか、こんなにも青いんだ。慰めにもならない。
この「過ぎていく」という進行形のところが詩情なんだろう。
そこにただ佇むしかない自分。佇んでいながら流れていく時を見つめている。
指の隙間から砂がさらさらこぼれていくのに見入ってしまう、あの感じのように。
歌詞のなかで、「時計の針をリセットして」とか「時間が無いんだ俺には」とか「もどかしくて涙が出そうさ」というのもあって、1秒1秒「過ぎていく」時間の中でどうにもなれない、時間だけは克服できない自分というものを噛みしめての言葉なんだな、と思って聞いている。恋をしているんだろう。抗いの熱が伝わってくる。
中年になって、私も「過ぎていく」時間を「過ぎていくままに」手放すことを、このいかんともしがたさを、せつなく思うときがある。悲しいじゃない、せつない、だ。時に心が震えて涙することもあるし、冷静に涼やかな目で遠くを見つめている、そんなニュートラルな時もある。この感覚が年を経るごとにどう変わっていくのか、わからない。ただ今は、「過ぎていく」の進行形のなかに、私も居る。
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by zuzumiya | 2012-07-03 11:58 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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