暮らしのまなざし

ビジネスと情のあいだで

朝夕に自転車で公園を抜けて行くと、風向きのかげんでほんのわずかだが、ろう梅の香りがする。季節は確実に春に向かっているのだと感じて、心が少し軽くなる。
例の講演会の企画の件は現在、ストップ状態である。

私がFAXで長い手紙を書いたその日のうちに、先生からじきじきに私の携帯に電話が来た。冷たい風が吹き抜ける地元駅の構内で、足踏みしながら、ゆうに1時間半は先生と話をした。そのなかで、私が思い描いていた講演会の話の内容が、書店には置かれていない最新作にすべて書かれてあることを知り、自分の直感が正解だったこと、先生との不思議な縁を感じた。

物を書くことや想いを伝えるということについても、私にもわずかだが経験があってその辺りの話はよくわかるので、ほんとに晴れ晴れするほど先生と意気投合できた。電話口で「その気持ち、よく分かります!」「先生のそういうふうに書くところが、ものすごく好きなんですよねえ」と感激してばかりだった。

だが、最後の最後になって、講演料のことに話が及ぶと、ちょっと雲行きが怪しくなってきた。熱い気持ちはあっても、営業経験などないので、講演料の相場は知らぬままに始めたのだが、「うちの言ってる額はおそらく安いんだろうな」とはわかっていた。我々は区立の一公共図書館であって、予算がふんだんにあるわけじゃない。かといって、物を書いて講演をすることを生業としている先生にとっては、自負というか矜持というかがあって、あんまりにも安い値段じゃ「失礼な!」ってことになるのである。

どんなに意気投合しても、ビジネスはビジネス。
ここから先は館長へバトンを渡すことになった。
しかし、私が「目を通しておいて下さい」と渡した先生の本を、館長が読んでいる姿を見たことがない。一スタッフの情熱と館長の温度差を百戦錬磨の先生が感じとってしまわないか、不安である。
とにかく、私としては先生の最新刊を注文して、読み込むだけだ。今の私にできることはそれぐらいだ。最新刊のどの部分を講演会で話してもらいたいかをチェックし、それから、講演会のタイトルも私が決めなくてはならない。

私は私のできることをして、あとは信じて待つしかないようだ。
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by zuzumiya | 2012-01-17 23:47 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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