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今、いちばん読んでみたい本

テレビやDVDやらで歌う宮本浩次を見るたびに、ああ、ほんとは私はもの凄く野生的な、オスなる男を求めていたのだなと感じる。
昔からずっと私の好みはインテリで物腰の穏やかな中性的な優男、今でいう草食系男子で、どちらかというとそういう男子を私がSっ気まんまんに自由奔放にリードしまくるのが愉しいと思ってたはずなのに、結婚生活を経て40も過ぎて、ふと気づいてみたら、宮本浩次のあの危ういギラギラした野性的な瞳に心臓を射抜かれてる。歌っているときの彼の姿は刃のように鋭く冷酷で、野蛮な艶気もあって、オスという強靭な獣性で迫ってくる。なんだろう。若い頃、男の理想を語るのにいちばん重要視していた「やさしさ」が、長い結婚生活でいつしか「ぬるさ」のようなものに変わり果ててしまったのだろうか。彼は単なる「刺激」なのか。それとも、私の中身は私が思ってる以上にいつでも女性的だったのか。わからん。でも、強烈に惹かれている。
井上荒野さんの最新作『誰かの木琴』が今いちばん読みたい本だ。
荒野さんは江國香織さんと親交もあり、同系の作家として位置づけられていて、おそらくライバルでもあって、年も互いに40代であり、夫婦関係のゆらぎや危うさみたいなものをいつでもそれぞれ互いの特徴を生かして上手に書いてくれるけれど、私はどちらかというと、荒野さんの方がそのへんの話題については上かな、と思ってる。江國さんはどんなに年をとってもご自身のように少女っぽい甘やかさがあって、夫婦の話にもそこがベースとしてあるから、ちょっとオブラートに包まれたやわらかな世界のような感じがいつもする。恋愛小説なのだし、それが江國さんの江國さんらしさだとは思うが、いつもどこかふわふわしている感じがする。個人的には、荒野さんの方がそこはもっと硬質で、リアルに確かに揺すぶってくる感じがする。
『誰かの木琴』という話は、夫も娘もある普通の40代の主婦が、近所の美容院からの営業メールに返信したことから、だんだんに20代の美容師の男の子にのめり込んでいき、ストーカーになっていってしまうというもの。雑誌『ダ・ヴィンチ』のインタヴューで、荒野さんは結婚生活の怖さについて「破綻するわけでも、仲が悪くなるわけでもないけれど、長いこと連れ添っていると、何かがずれていく感じというのはやっぱりあると思うんです」と語っている。
この「怖い」と言われる「何かがずれていく感じ」は、本の中身をまだ読んでないからよくはわからないが、私が個人的に思うに、はっきりとしたすれ違い(これなら簡単なんだが)というよりも、長い間、共に暮らしていくなかでささいなことを少しずつ譲歩して諦めざるをえない、それが和であって、幸福へつながると信じ込もうとすることの積み重ねによって、生まれてしまった副産物のような感情、なんじゃないか。幸せになろうとすることも、相手を大事に思うことも、実は努力や勤勉さがいるものであり、すでにそこに生じてしまう微かな違和や疲労。家庭の維持と平和を願うなかにこそ生まれて、澱のようにたまっていく何か。そういう不穏さがもし描いてあるのなら、非常に興味深いと思う。
by zuzumiya | 2011-12-12 00:47 | 日々のいろいろ | Comments(2)
Commented by pretty_kitten at 2011-12-13 12:02 x
井上荒野さんのは読んだことないですが、いいですか。読んでみようかな。江國さんの現実離れしたのも好きです。最近は時代小説ばかりでこういうの久々に読みたくなりました。
宮本さんは、かっこいいですね。どんどん惹かれてますよ(笑)。若い頃より年齢を重ねてより魅力的に感じます。
Commented by zuzumiya at 2011-12-13 20:29
荒野さん、早速読んでいます。読みながら、夫婦ってなんだろう、結婚って何?とか、いろんなこと考えています。いい小説は答えがパッとわかるようなものじゃないんでしょう。立ち止まらせて、考えさせる、答えなんか最終的にこのまま生きてみないと(生きてみても?)わからない、ただ、問いかけられてる、というのでいいのかもしれません。「?」を「!」にどれだけできるか、それで私たちは生きてる、生きたいのかも…。
なんとなく、今の読んでる段階で私がふと思ったのは、子どもが生まれて家族になっていくわけだけれども、夫も妻も「家族」というひとつのつながりで、もはや性をこえてしまうんじゃないかな、と思ったりします。子を持ち、育てるというのはそれほど凄い「賭け」なんだな、と。家族という「つながり」が意識の中心になってしまえば、性は邪魔者で存在が薄くなるのは当然なんだろうなと思います。動物のように繁殖期をすぎれば、また一からただの雌と雄になるというわけにはいきませんもんね、人間は。46になってもまだ夫婦のことはよくわかりません(苦笑)。
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