暮らしのまなざし

小さな光を掬うように。

ときどき娘を見ていると昔の自分を思い出して何とも言えない気持ちになる。
娘は母に世間一般の「おばあちゃん」を求めている。
世間一般の、孫を可愛く思う、そういうおばあちゃんだ。
そんなの無理だと何度言い聞かしてもやめない。
頭でわかっていても、求めてしまう。
遠い遠い昔の私がいる。

母の店の従業員が子どもが風邪で具合が悪いのに家にひとり寝かせて、夜働きに出てきてしまったことがあったらしい。母は酔っぱらった勢いで「あんた、ダメだよ。子どもが具合が悪いのに置いてきたりなんかして」と説教したという。
そのうち、ますます鼻息を荒げて「あたしなんか、猫を5匹も育ててんだから」と言い放ったらしい。その話を聞いた娘は、あとで涙が出てしょうがなかったという。
私のように母に置いていかれた種違いの姉が、泣いてる娘の頭を何も言わずただひたすら撫でていてくれたという。

その時流した娘の涙を思うたび、私は目をふせる。
そして、種違いの姉の無言のやさしさも、みんなみんな思うたび、ただ目をふせる。
ずっと感じてきたあの強烈な「せつなさ」にまで、だいぶ針が振れなくなった。
昔だったら、すぐに泣いていただろう。
どうしてだかわからない。
年をとったのか、もう慣れてしまったのか、諦めたのか。
でも娘はまだあの頃の私のように渦中にいる。
許せないでいる。胸を痛めている。
娘は私のために、泣いてくれた。
母に置いていかれて、なおも母を慕っていた幼い頃の私を思い描いて、
私に涙したんだろう。
そして、その想いを同じ境遇の姉はすぐにわかったのだろう。

この話を聞いたとき、娘と種違いの姉をとても小さく愛おしく感じた。
私の知らないところで、そんなことがあって、
このふたりのなかに宿っているやさしさに、
このふたりに通い合っている静かなやさしさに、
掌でそっと小さな光を掬うように、ただ感謝している。
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by zuzumiya | 2011-10-18 23:41 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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