家族の食卓を撮る

おとついのNHKの「トップランナー」に映画監督の荻上直子さんが出ていた。
荻上さんといえば『かもめ食堂』や『めがね』で有名、最新作は字幕の『トイレット』。脚本も監督も両方やって、女優もたいまさこさんを撮らせたら今やピカイチの方。フードスタイリストの飯島奈美さんを一躍有名にしたほど、彼女の映画といえばごはんのシーン。実に自然であたたかみがあって美味しそうに撮れている。

インタヴューでは、人間を描きたいがためのごはんのシーンであって、ふつうに人の暮らしの中にあるもの、人と人との距離を縮めるものと答えていた。
話を聞いていて、いちばん印象に残ったのは、最新作『トイレット』でのごはんシーン。餃子を家族みんなで作って庭で食べるのだけど「すごく幸せそうで、その一方ですごく儚い感じ。みんなで一緒に作って、食べて…。だけどその幸せな時間が長くは続かない感じが出てる」のだそう。

たしかにそうだ。どこかの車のCMで「家族の時間がなんたらかんたら」というキャッチコピーがあったように思うが、家族の時間は過ぎてみるとほんとうに短い。
子供が中学生や高校生ともなれば、部活やら塾やら習い事やらで家族みんなで揃ってごはんを食べることが少なくなってくる。休日だって、家族より友達どうしのつきあいを優先されてしまう。ファミレスでよく見かけるような「前を向いて食べなさい!」「ほら、こぼさないの!」なんて子供をどやして、母親が自分の食事より子供の世話が忙しくてごはんが何処へ入ったかわからないような家族の食事の風景なんて、いま思えばほんとに懐かしい。
車もそう。家族や子供の友達まで乗せていたファミリータイプのバンなんて、すぐにいらなくなる。家族で夏休みの旅行も行かなくなるし、息子の野球やサッカーの仲間たちをどかどか乗せることもなくなる。いつしか夫婦でスーパーへ買い物に行くだけになって、軽自動車ですべてことが済むようになるものだ。ほんとに家族の時間なんて短い。そして荻上さんが言うようにそれは儚いものだとしみじみ思う。

私はドラマや映画や市川準さんのCMなんかの、家族で食卓を囲むシーンで、
たとえば
  母 「お父さん、はい、お味噌汁、熱いですからね」
  息 子 「親父、醤油とって」
  母 「おじいちゃん、袖、お味噌汁に浸かりそうです」
  娘 「お母さん、目玉焼きは半熟って言ったのにぃ、もう〜」
  母 「ごめんごめん、ちょっと忙しくて蓋とるの忘れてて」
みたいな会話のやりとりが大好きで、特に「親父、醤油とって」のなかにある一本の醤油差しを家族みんなで順に手渡しで回すときの、あの待ってる感じ、分け合う感じの間合いというかがほんとに「家族の食卓」の醍醐味だと思っていて、いちばん愛すべき瞬間だと思っている。
自分が食事のシーンを作るなら、必ずこの「醤油とって」を忘れずに入れるだろう。
幸せそうで、でもだからこそ儚い感じ。まさに家族そのものにあてはまる。
「美味しそう」「ほっこりする」「癒される」と評される荻上作品だけど、新たなキーワードとして憶えておいていいと思う。
[PR]
by zuzumiya | 2011-01-24 11:40 | わたしのお気に入り | Trackback | Comments(6)
トラックバックURL : http://zuzumiya.exblog.jp/tb/11981571
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by pretty_kitten at 2011-01-24 15:37 x
ああ、トップランナー見逃しちゃったんだった。
飯島奈美さんの「シネマ食堂」という料理本買って、時々眺めて癒されてます。
料理作ってはいなんですけどね。汗
Commented by Naomi at 2011-01-24 16:54 x
そうそう、食卓や車で家族の変化って感じますよね。
それと私が最近感じるのが洗濯。
かつては毎日、泥汚れの洗濯物が山のようにあったのがにいつの間にかダンナと二人分の洗濯物。
楽になったけれどちょっと寂しさもあるかな。
家族って「儚い」ものなのかもね。
だからこそ今この時を大切にしなくちゃね。
Commented by うさぎ二匹 at 2011-01-24 20:30 x
本当にそうですね。

我が家は小6と年長児で6年離れてるんですけど、今ですら家族揃ってというのはなかなかありません。

上の子は下の子が生まれて暫くすると、子供ながらに気を遣ったのか?さっさと親離れをしました。小学校低学年。早過ぎでしょう!!
当時は手が掛からないし、良いわ~(笑)なんて思っていたのですが、今は切ないな~(泣)と思います。

なので…
下の子との生活、できるだけ一緒にと心掛けています。4月には小学生と中学生。また一段と離れて行くのでしょうが(また悲しいな…)大事に大事にします。
Commented by zuzumiya at 2011-01-24 21:49
pretty_kittenさん、見逃しちゃったの? 荻上さんって38だったっけかな。そこらの会社で経理やってそうな、ほんとに目立たないフツーの人。でもね、箭内さんに言われてたけど、「ごめんなさい、ごめんなさいって言いつつ人をかき分けていちばん前に出ちゃう人」だって(笑)。
Commented by zuzumiya at 2011-01-24 21:57
Naomiさん、来てくれてありがとうございます。洗濯物って、そのとおり!
うちはお兄ちゃんが家を出てますから、ほんとに減りました。最近ではクリスマスがいちばん寂しさを感じました。小さい子供がいると「サンタがね…」とか「プレゼントはどうする?」なんて言えるでしょう。デパートなんか行くと特に感じる。あの頃がやっぱり楽しかったなあと思いました。作家のよしもとばななは玄関の靴に家族を感じるらしいです(笑)。
Commented by zuzumiya at 2011-01-24 22:10
うさぎ二匹さん、初めまして。よろしくお願いします。ほんとに過ぎてみれば、あっと言う間です。小学生と中学生に同時に進級。お母さんの大変さ、よくわかります。そして、懐かしく羨ましくも思います。中学生、だんだんと難しくなっていきますから、どうか上のお子さんとの時間も大切にしてあげて下さい。何気ないいつもの暮らしのなかに思い出がいっぱい詰まっています。子育てのビデオも見返してもそう思います。ちょっとでも心をかすめたことは、ブログに書いて大事にとっておきましょう。今度そちらのブログにも行かせて頂きます。


ふだんの暮らしに息づいているたいせつなもの、見つめてみませんか?


by zuzumiya

プロフィールを見る
画像一覧

S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

※このブログの無断な転載はご遠慮願います。

最新の記事

恐るべきシーリングライト
at 2017-08-20 09:25
私という有限
at 2017-08-16 20:44
こんな体たらく
at 2017-08-14 19:30
「more records」..
at 2017-08-12 06:24
生まれ変わっても会いに行く
at 2017-08-07 20:48

最新のコメント

検索

ブログジャンル

画像一覧