夕暮れに…

見上げると澄んだ空に小さな雲のかたまりがふたつ
端をピンクに染めて浮いている。
「ああ、今日も一日終わったなあ」
なんだかほっとして、駅からの帰り道、ゆっくりと人について歩いていく。
鴉が鳴き交わしている。
自転車に乗った高校生たちがおしゃべりしながらやってくる。
「今夜のおかずはさて何にしよう」
頭のなかで洗濯物を取り込んで
台所で忙しく立ち働いている自分を思い浮かべる。
灯りをつけて、ストーブで部屋を暖めて
夕餉の仕度のいい匂いをさせて、帰ってくる家族を待つ。
そんな何でもないいつもの暮らしがなぜだか無性にいとおしい。
すれ違った高校生の男の子が友達に
「また、明日な」と言った。
ふいに飛び込んできた言葉に明日が来なかった同僚を思い出す。
重なる枝の向こう、家々の屋根にきれいな夕焼け。
今日が終われば、普通に明日がくること。
そんなこと、当たり前すぎて、さっきの高校生は考えもしないだろう。
           
夫が探し物で古い書棚を開けたら、私のアルバムが出てきた。
なかに幼稚園の卒園式の集合写真があって、
担任の原先生がおばあちゃんの肩を抱いて、二人とも満面の笑みで映っていた。
たくさんの着飾った母親たちが居並ぶなか
原先生はまんなかでおばあちゃんの肩をぎゅっと引き寄せている。
母親がわりに孫を育てるこれからを思って
「おばあちゃん、まずはここまでよくがんばったね」
おそらくはそんな気持ちだったんじゃないか。
ありがたくて涙が出た。
あの頃、幼い私は何も知らなかった。知らずに育ててくれていた。

あまりに普通で、いつものことで、毎日おんなじで、
気にもとめない、何にも知らない。
そんなふうにして、しあわせに暮らしてる。
そうしてきっと、いつかそのことに、ただ泣けてくるんだ。
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by zuzumiya | 2011-01-18 23:10 | 日々のことづけ | Trackback | Comments(0)
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