暮らしのまなざし

ブログらしく近況8

夫と昼にラーメンをすすりながら、テレビのリモコンをカチカチしてたら、たまたまNHKの囲碁番組にぶつかった。
画面いっぱいに囲碁盤が出て、黒と白の碁石が、真ん中より右あたりをまあるく開けてぐるりと密集していた。
画面の右上と左下とには対戦中のふたりの棋士の姿が映し出されている。
私たち夫婦は囲碁をまったく知らない。
囲碁に詳しい人が見たらすぐに今どちらが優勢なのか、もしかしたら、もうそろそろ終わりが近いな、とまでわかるものかもしれない。
でも、私たちはまるきしそれがわからない。
普通ならここでつまらないからチャンネルをすぐに変えてしまうところだが、なぜか、このふたりの表情や仕草からどちらが今勝っているのかを当ててみよう、ということになった。他に面白そうな番組がなかったせいでもある。

しばらく見ていると、右上の人がやたらに落ち着きがないのがわかった。
体をひっきりなしに前後にゆすぶって、ぴちぴちとけいれんのようにものすごい速さでまばたきしている。
「あれはものすごいストレスなんだろね」
「そうだね。ありゃ、チックじゃないかね」
かたや、左下の人はじいっとうつむいて微動だにしない。
わけのわからない、ほんとに重箱の隅とでも言いたくなるような隅っこに碁石が一つ置かれた。(どちらがどの色の碁石かは忘れてしまったが、あんまり関係ない)
すると、左上の人がいちだんと大きく体を動かし、目を激しくしばたかせ、今度は気合いを入れたのか、頭を一回ぶるっと振った。
その間、しごく冷静な、冷酷とも言えるような機械的な声で、秒数のカウントがなされていく。
「あれは、たまらないね」
「数学のテストしてるその横であんなカウントされたら、死にたくなるね」
「死にたくなるね」
ようやく碁石を置き、ほっとしたのか、右上の人はくるりと後ろを振り返ってお茶を一口飲んだ。一瞬、笑った。
今度は左下の危機だろうに、左下の人は表情も変えず微動だにしないままだから、なんとも面白くない。
容赦ないカウントに気を揉むが、右上の人が自分の番でもないのに、せわしなく体を前後に揺らすたび、画面の碁盤の上からちらちらと禿げ頭が見え隠れするので可笑しい。
どうやら制限時間が近づいてくると、容れ物のなかの碁石をじゃらじゃらやりたくなるようで、左下の寡黙な人がじゃらじゃらしてからひと粒握り、またわけのわからない、効果のうかがいしれないところに、ぽつんと置いた。
すると、どうしたことか、右上の人があわあわと尋常じゃない慌てっぷりをみせた。
右手を口元に持って行き、口を開くと、爪を噛みたそうに白い歯をイーッとみせた。
いい大人なんだから、爪を噛むのはなあと思っていると、本人もそれに気づいたのか、手を引っ込めた。
「今さ、爪噛もうとしてたよ。爪、噛むなんて、尋常じゃないよね」
「そうだな。かなり苦戦してるのかもな」
「あの人、爪噛む人だったんだね…」
(私はいい年をして爪を噛む)

そのうち、ラーメンを食べ終えてしまった。
スープもほとんど飲んでしまい、満腹になると、急にどうでもよくなってきた。

「もういいか?」
「もういいよ」

ぷつんと、テレビは切られた。
結局、どちらが勝っているのかわからずじまいだったが、別にいい。
久しぶりに「ヒマつぶし」というものをした気がした。
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by zuzumiya | 2010-12-08 17:18 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(0)
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