なんで書くのかの話

今朝、トイレに行ってびっくりした。
朝っぱらから下半身の話題で申し訳ないけど、私はパンティライナーの愛用者だ。
年齢からいって「尿漏れ対策だろ」と勘ぐられそうだけど、単なる清潔志向の人間なのだ。なんて、話はそんなことじゃない。
最近、ライナーを違う会社のものに変えてみたが、朝、下着に取り付けようとして包装を破ったら
「つらいときは無理しないでね」
と下地の紙に文字が書いてあった。一瞬「え?」と思った。
すぐにパンティライナーと生理用品の「軽い日用」を間違えて購入してしまったのかと思った。あわててタンスを開けてパッケージと残ったライナーを1枚ずつ調べてみた。
そうしたら、ちゃんとパンティライナーであって、しかも包装にメッセージが書いてあるのが、全部で5枚ほど見つかった。知らずに今まで使っていたのを含めるとワンパックに10枚位はあるのかもしれない。全部に書かれてあるわけじゃなくて紛れてあるというのがいい。書かれてあるメッセージはこんなのだった。

「あなたの笑顔はみんなの為だよ」
「元気じゃないときれいになれないよ」
「いつも元気でいようね」
「からだのことも気をつけてる?」

なんだか、じいんときてしまった。朝っぱらからベッドに腰掛けて、パンティライナーを両手で握ってじっと見入ってしまった。
こういうこと、地道にちゃんとやってる人がここにもいるんだなあ。
以前に私は「日々のことづけ」で某ハンバーガーショップのコーヒーマドラーに書かれてあるメッセージの役割ついて書いた。そんでもって、私と私の言葉はそんなふうな街の片隅の小さな店の1本のマドラーでいいんだと、決意したことを憶えている。(1/26日の「誰かの笑顔のために、あなたの言葉を使いましょう」の記事)
想像してみてほしい。
今日は人出がやたらにあって、朝からずっと忙しさの続くなか、隣の同僚にちょっとトイレに行ってくると声かけして、ようやく一人になれたトイレの個室。早く戻らなきゃという気持ちとやっと落ち着けたという気持ちが複雑に絡まるなか、座って用をたしていると、さっきネチネチと嫌みを言って行った客の顔がちらつく。「うるせえんだよ、禿げおやじ」
ペラリとめくったライナーの包装紙に、
「つらい時は無理しないでね」の文字。
「あ」
次の瞬間、思わず、ほろっと(泣きはしないが)心にじんわりあたたかいものが込み上げてくるんじゃないか。
都会の雑居ビルの薄ら寒いトイレで、蛍光灯の奥の一本がチラチラ点滅なんかしている小さな従業員用トイレの個室で、下半身すっぽんぽんで、そこにはやっぱりライナーを両手で握りしめてじっと見つめている若い女の子の姿が、見えてしまうじゃないか。
都会の片隅で頑張って生きてる彼女の孤独が、見えてしまうじゃないか。
私だったら、やっぱり、一瞬癒されると思うのだ。
誰かにちゃんと頑張ってるところを見ててもらったような、
それでいて、ちゃんと大事に気遣ってもらってるような、
具体的な誰じゃなくとも、カミサマのような漠然とした何かからの、
天から降ってきたような言葉たち。
そんな言葉に、疲れた顔がちょっとだけ、ふふっと微笑むような、
ちょっとだけ、口角がぴくっと上がるような、わずかな力が宿ってる。
だから、こういうメッセージをつけてあげるのって、実はとてもいいことだと思うんだ。

図書館の仕事で、誰かが書いた人生論みたいな本をどの棚に置くかで相談していたときに、ある人が本を開いて、
「お前に言われたかないよ」
と笑って言い捨てたとき、なんだかすごく寂しくなった。
言葉ってさ、そんなに簡単にわかったように片付けるもんじゃないよ。
「じゃあ、誰からの言葉だったら、もっともだと頷けるんですか」
って、喰ってかかりたかったけど、大人げないからやめといた。
街のハンバーガーショップの1本のコーヒーマドラーに記された言葉だって、
パンティライナーの包装紙に記された言葉だって、
ある時はものすごく心にじいんとくる。
助けてくれる。
温かみを持ってる。
有名な詩人や哲学者の言葉にも負けないくらいの威力があるもんさ。
ねえ、そうは思わない?
プロでもアマでも関係なしに、偉くもなく成功者でもなく、誰かの言葉が今日もどこかで誰かを救う。そんな言葉のぐるぐるの可能性のなかに生きていたいじゃん。
だから、書くのかな、今日も。
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by zuzumiya | 2010-11-01 13:34 | 日々のいろいろ | Trackback | Comments(2)
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Commented by 悠里 at 2010-11-02 08:52 x
こんにちは。街のちょっとした言葉でほっとすることってあります。誰が言ったかではなくて、何を言っているかという言葉の純度で威力って発揮されるんだなと、この記事を読んで思いました。そういう可能性の世界に生きていたいって私も思いました。zuzumiyaさんの言葉にいつも励まされたり、気付いたりすることが多いです。ありがとうございます。
Commented by zuzumiya at 2010-11-02 10:45
こんにちは。いつもコメント頂いてすみません。「誰が言ったかではなくて、何を言っているかという言葉の純度で威力が発揮される」とは、こちらこそよい言葉だなあと思いました。こうやってちゃんと着地せねば、と思ったほどです(笑)。でも、伝え合うってこういうことなんですかね。パンティライナーの話なんぞして、うねうねと私の頭のなかの道を一緒になって並んで歩いて、でもちゃんと話を選別して、「こういうことですよね」とエキスを持って行ってくれるんだから、凄いよなあ。与えること、受けとることの妙を感じました。こちらこそ、ありがたいです。


ふだんの暮らしに息づいているたいせつなもの、見つめてみませんか?


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